人員の流動について、インドはIT人材の海外進出を促すため、高度な自由化を求めている。これは国内の雇用保護を重視するASEAN諸国の意見と食い違っている。
日本は2017年11月のRCEP首脳会議で慎重な態度を示したが、今年3月の閣僚会合で世耕氏は方針転換し「ASEANの年内妥結の意向を支持する」と述べた。今回の会合では「目標は高品質だが、柔軟性についても考える余地を残す」と表明した。発展途上国が発効後から一定期間内に過渡的措置を講じることを認め、この方針に基づく合意に傾いた。
しかし「自由貿易の旗手」になるためには、合意内容を軽視できない。RCEPの合意は、米国へのけん制になるからだ。
その一方でアジア諸国の交渉代表者の中には、「(厳しい条件を求める)日本がいなければ、RCEPは合意に達するだろう」と不満を口にする人もいる。
ASEAN諸国は2019年に多くの政治日程を控えている。タイは2019年2月に選挙を行い、インドネシアも4月に大統領選を行う。年内に合意できなければ、再び棚上げされる恐れがある。
米国政府に圧力
共同通信の2日の報道によると、RCEP閣僚会合は年内妥結の目標を掲げた。これは日本が多くの「防波堤」を築き、貿易問題で圧力を強めようとするトランプ政権の意図に対応しようとしているからだ。重要な中国やインドなども米国を警戒する方針で一致しているが、市場開放などの具体的な論調をめぐっては溝を残している。
安倍氏は1日の会合の冒頭に、「ついにRCEPの番になった。自由で公平な市場を構築しようではないか」と熱意を込めて発言した。
7月下旬に始まる新たな日米貿易交渉において、米国は日本に二国間協定をめぐる交渉を迫ることになる。TPPと日EU経済連携協定(EPA)の交渉で妥結した安倍政権は、難航中のRCEPの交渉に力を入れることで米国けん制の「強い情報」(政府関係者)を送り、初めて日本で閣僚会合を開く姿勢を貫いた。
大規模な多国間協定を蓄積し米国からの要求を回避し、米国に孤立による焦りを覚えさせる。日本のこの戦略は、他国と一致している。しかし異なる国が団結する道のりは険しく困難だ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月3日