中米パワーゲームを中国国内改革で解消
中国経済や世界経済にとって目下のリスクは、やはり米中貿易摩擦だと私は見ている。米中貿易交渉が最悪の形で決裂すれば全世界がマイナス成長に転じ、中国の経済成長率も今の6%台から4%台、あるいは3%台まで落ちてしまうリスクもある。このためG20で期待される米中首脳会談は、本会議以上に注目を集める重要な会談になるだろう。米中両首脳がお互いに歩み寄るような会合になることが強く望まれる。
米中間に横たわる食い違いは非常に難しい問題で、米国が中国に対して強硬な姿勢に出始めた理由は、中国を脅威だと思う気持ちがより強まっていることにある。中国の経済力が米国に迫り、経済力の発展を背景に軍事力も強まることで、今まで世界を牛耳ってきた米国の一極覇権体制を揺るがし、大きな脅威となると受け止めているからだ。米国が中国に対して厳しい態度に出ている根本的な原因はここにある。
米国トランプ政権の考えに理性的な思慮はない。中国が脅威となることを食い止めたいという思いしかないから、国際的なルールに対する尊重も欠けている。中国がいくら協議文書をめぐり主権侵害を主張しても、米国はそれをわかってやっている。こうなると完全なパワーゲームの世界で、ルールやモラルが通じない部分が非常に大きいから、お互いが妥協できる方法を直接対話の中で探っていくしか方法がないのだ。
一方、中国政府は改革開放を進めることを対外的に宣言してきたにもかかわらず、実際には改革の実行が遅れているという事実がある。劉鶴副総理を中心に外商投資法が決定され、来年1月から施行されるが、世界中がこれに注目している。この法律で明確に規定されている中身が本当にきちんと実施されるよう中国政府が徹底すれば、確実に世界から評価される。そうすれば中国に対する批判は米国国内でも当然弱まるし、欧州や日本は特に高く評価する。そしてその高い評価が米国の理不尽な対中強硬姿勢にとってプレッシャーになるだろう。中国は当面そこに向けた努力を地道に続けていくことが、非常に重要だと思う。