文=劉江永・清華大学国際関係学科教授
メディアは最近、日本の岸田文雄首相が今月下旬にNATO首脳会議に出席し、さらに中国対応を目的とする「自由で開かれたインド太平洋」の構想を推し進めるべく、会期中に日韓豪NZの4カ国の首脳会合を検討中と伝えた。日本政府が最近、防衛予算拡大、攻撃目的の軍事力の発展、台湾海峡関連問題などで前進し続けていることが分かる。
日本が現在直面している最大の脅威は外部の安全環境よりは、日本の国家戦略の脱線にあると言うべきだろう。「国家戦略の脱線」とは主に、日本が戦後憲法の平和的発展のレールから外れ、遠交近攻の隣国を敵視する軍事外交戦略を講じていることを指す。
まず、安倍晋三政権の発足後、日本の外交には外交・安全(軍事)の一体化の漸次的な実現という重大な変化があった。日本はもはや、自衛隊が「専守防衛」を厳守し、外務省が国際舞台で広く平和的外交を展開し、自国の総合的な安全保障を実現する国ではなくなっている。日本防衛省が頻繁に国際舞台に登場し、さらには国際交流の主役になっている。日本の外交と防衛には分業があるが、軍事安全を離れて日本の外交、特に対中政策を論じてもその本質と全貌が見えてこない。
次に、日本の国家戦略には国内で改憲を目指し、対外的には「自由で開かれたインド太平洋」を通じ中国に対する地政学的なけん制を実現するという2大目標がある。岸田内閣は安倍内閣による上述した国家戦略2大目標を継承した。自民党内では現在、改憲派が有利になっている。戦後憲法は米国から押し付けられたものと称し、「中国の脅威」に対応するためには改憲による軍拡が必要と強調している。
日本の上述した国家戦略の目標の設定は、単純に米国に追随したわけではない。実際に安倍氏は2006年に初めて首相に就任する前に、中国を念頭に米日豪印の同盟を形成するべきと主張していた。安倍氏は首相就任後の2007年に、「価値観外交」と「自由と繁栄の弧」という構想を掲げた。2016年にはさらに「一帯一路」イニシアチブに対抗する、いわゆる「自由で開かれたインド太平洋」戦略を正式に掲げた。安倍氏は2017年に米国に誘いかけ、中国を念頭に置く「インド太平洋戦略」を策定した。いわゆる「インド太平洋地域」は今や、バイデン政権が認める戦略的中心地帯になっている。
日本のインド太平洋戦略のアップグレード版として年内に発表される新たな国家安全保障戦略は、NATOの軍事力のいわゆる「インド太平洋地域」への進出を歓迎するとし、中露朝を対象とする米日欧の軍事大連盟を構築しようとし、さらにASEANと韓国を取り込もうとする可能性がある。他にも日本は敵国の指揮中枢を攻撃する、いわゆる「反撃能力」を保有することを決定する。かつ5年内に防衛費の対GDP比を1.24%から2%に引き上げ、憲法の制限をさらに打破する。これが日本の国家安全にとって、高コスト、低安全性、持続不可能な危険な道であることは明らかだ。特に日本が経済及び財政の成長が緩慢な状況下、今後5年で防衛費を倍増させる計画を急に打ち出すとは、戦後では珍しい異常現象だ。これにより日本政府が国民生活面の財政支出を削減すれば、岸田氏が掲げるいわゆる「新資本主義経済」が失敗に終わる可能性がある。
それから、台湾地区関連及び釣魚島の問題をめぐり、日本は決して米国に追随するだけではなく、中国と米国の戦略的矛盾を積極的に利用し漁夫の利を得ている。今年に入り、日米首脳による共同声明、米日豪防衛相と米日韓防衛相による共同声明の中で、何度も台湾海峡関連の問題に触れている。釣魚島問題をめぐり、日本はさらに積極的に米国を共同防衛に抱き込み、リードしている。これは釣魚島の主権帰属問題をめぐり米国に日本側に立つよう迫り、中国側に後退を迫るためだ。
米国の戦略家はかつて米日同盟を軍国主義復活を防止する「栓」と称したが、実際の米日同盟はワニの卵の殻に似ているかもしれない。日本は内外の環境を利用し自国を「戦える軍事大国」にし、殻を破り外に出ることで、米国への戦略的な依存を減らそうとしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年6月22日