観測網:海底世界を「中継」
人類は昔、海面または空中から海を観察していたが、科学技術の進歩に伴い、海底に観測網を設置し、海底から海を見上げることができるようになった。
しかし、変化が多い海でこれを行うのは口で言うほど簡単ではない。
中国科学院の戦略的先導科学技術特定プロジェクトの支援のもとで、中国科学院海洋研究所は3年以上かけて数回の航海を行い、熱帯西太平洋に73セットの潜水式標識ブイを設置し、16セットの潜水式標識ブイからなる中国の西太平洋科学観測網を構築し、西太平洋の代表的な海域で最大5093メートルまで観測した。また、温度、塩分、海流などのデータを3年間取り続けた。
2016年の航海で、中国科学院海洋研究所は潜水式標識ブイを使ってリアルタイムデータを長期間転送するという世界的難題をクリアし、深海データの「中継」を実現させた。
海底に設置した観測網は海底の「目」のようなもので、地上と海面の観測、空中のリモートセンシングに次ぐ「3つ目の地球科学観測プラットフォーム」とされた。
中国の海洋分野における最初の国家重大科学技術インフラである「国家海底科学観測網」はすでにプロジェクトとして認可されている。建設期間は5年、投資額は21億元。完成後は世界一流、世界先進レベルの海底科学観測研究施設となる。
同済大学の汪品先院士は、「中国の深海研究のスタートは多くの国より遅く、深海科学技術の世界トップレベルとの差はほかの多くの分野より大きい。海底科学観測網の建設を積極的に進めることは、海洋科学技術強国の建設を実現する上で大きな意味を持つ」と話す。