また、アジアにあるほかのビジネスソリューションセンターの業務がオンショア事業向けに限られているのと異なり、無錫センターは世界のオフショア事業にバックオフィス業務を提供し、その決済サービスはアジア太平洋地域全体をカバーしている。
2016年の設立時に200人だった無錫センターの従業員数はすでに300人を超え、上海と北京の両センターの総従業員数に迫っている。
UBSの中国拡張はこれにとどまらない。ケラー・ブッセ氏によると、UBSは、中国でのビジネスソリューションセンターの規模を拡大する機会を探り、中国フィンテックの力を借りて、UBSのグローバル運営能力を高めようとしている。
▽科学技術の開発を強化
10年前、外資が中国に入ってきたばかりの頃、先進国の進んだ金融商品・技術は、当時の中国資本が模倣を試みる舶来品だった。だが10年が経った今、中国のフィンテックの発展により、中国はイノベーションの生まれる聖地となりつつある。ケラー・ブッセ氏は「フィンテック応用分野では、中国はすでに世界をリードしている」と語る。
スイス本土に「デジタルファクトリー」を設立したUBSは、中国の上海でもフィンテックチームを結成、主にビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの技術の研究開発と応用を手掛けている。
昨年、上海ビジネスソリューションセンターは、RPA(ロボットによる業務自動化)プロジェクトを始動し、すでに29ロボットを運用している。RPAチームはさらに30ロボットを生産する予定だ。こうした革新措置は、中国ビジネスソリューションセンターが顧客に24時間年中無休のノンストップのハイクオリティサービスを提供することを可能とし、人件費の削減にも役立つ。
事業部門では、中国市場はUBSの業績が最も伸びている地域の一つで、中でも資産管理は同社が力を入れるブルーオーシャン(未開拓市場)となっている。中国で増加する高所得者は、大量の資産管理ニーズをもたらしており、これはちょうどUBSの強みと合致する。「中国の資産管理事業のさらなる開拓はUBSの重点事業の一つだ。われわれは世界的な競争優位を持っている」とケラー・ブッセ氏は自信をのぞかせる。