「自分と自分の家族がこのまま都市に留まって暮らしていくことができたら」。上海万博会場の工事現場で働いたこともある河南省出身の農民工・王慶華さんの願いだ。
農村を離れて10年になる王さん。「村に戻ってもう一度農業をやるのは難しい」と話す。しかも、「わが家の農地は収用されるとも聞いている」という。しかし都市に出稼ぎに来ている彼は一度も自分を都市住民だとは思ったことがない。「家も買えないし、医療費保障も都市住民より低いうえ、子どもが高校に進学しようと思ったら故郷に帰らなければならない。都市戸籍にいたっては、取得するのは不可能に近い」。「村に帰れば、村の人たちは私を都市住民だとみなすが、都市では、誰もが私を農民だとみている」という板ばさみにあるのだ。
上海社会科学院の左学金常務副院長は王さんのような境遇について、「『浅い都市化』を反映したものだ」と指摘する。都市戸籍がないまま都市で生活している1億8200万人近くの人口と4000万以上の失地農民が、中国の「人」の面の都市化を明らかに遅れさせているという。
「GDPのためだけに都市化を進めると、土地などの要素は都市化されるが、人の面の都市化は進まない。これはより良い都市生活をもたらすことはできず、かえって尽きることのない問題をもたらすことになる」。シンガポール国立大学東アジア研究所所長の鄭永年教授はこう警告する。
左副院長によれば、現在、中国の都市化率は46.6%であるが、都市戸籍人口が総人口に占める割合は約33%である。つまり13.6%の人口、即ち1億8200万人は都市戸籍がないまま都市で生活しているということで、これらの人々は真の都市化はされていない。ここからみるに、中国はいま「半都市化」の状況にあり、「全都市化」にはまだ遠い。
さまざまな研究でも、土地の面では中国の都市化は進んでいるが、「人」の面では明らかに遅れていると指摘されている。中国社会科学院の「2009中国都市発展報告」によれば、01~07年、中国の地級市以上の都市の市轄区・市街地面積は70.1%増加したが、その人口はわずか30%しか増えなかった。
別の研究も、合理的な都市用地増加係数(都市用地増加速度と都市人口増加速度の比)は1.12であるが、国内24都市の80~95年の都市用地増加係数は1.91に達し、都市用地増加速度は都市人口増加速度の2倍近くに及んだと指摘している。
ある研究機関の報告によると、「半都市化」の問題を解決するためには、農民工の市民化を推進することが重要である。都市で長期的に就業し、居住している農民工及びその家族については、本人が希望すればその都市の市民の身分を取得できるようにし、都市市民と同等の公共サービス、政治的権利を享受し、同等の市民の義務を負って、本当の意味での都市市民にする必要があるという。
上海同済大学の呉志強教授は、「改革開放以来30年、中国は人口の30%の都市化を成し遂げた。続いての30年は都市化をどのように進めるべきかを考える必要がある。私たちは30年間で米国の人口の2倍にあたる農民を市民に変えたが、さらにこれほどの農民を市民に変えなければならない」と話す。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年2月10日