米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」のウェブサイトに昨年12月20日、米国人記者Jessica Meyersによる記事「北京:どこに住むかを探すうちにどう暮らすかを知る」が掲載された。
住み家を探すことが都市と住人を知るきっかけになった。
北京は、その他の多くの中国の都市が抱えるのとは反対の問題に直面している。住宅需要が極めて大きく、供給が不足しているのである。とりわけ不足しているのは、手頃な価格の住宅である。英誌「エコノミスト」の2014年の中国40都市住宅指数では、北京は、不動産価格が2番目に高い都市とされた。
中国不動産業のアナリスト・Michael Cole氏は、「北京の不動産購入は普通の人にとってはまだ高すぎる。そのため不動産の賃貸需要がますます高まっている」と指摘する。Cole氏は、主要な不動産投資と市場取引をフォローするサイト「明天地(Mingtiandi.com)」を運営している。Cole氏によると、中国では、ホワイトカラー層の流動性が高まっており、小都市の専門人員が北京に流れこむという状況がますます際立ちつつある。
賃貸価格はピンきりだ。毎月70ドルで住める地下室もあれば、2DKで毎月4500ドル支払わなければならない天安門付近の高層マンションもある。空き家や価格については公的な資料がほとんどない。
そんな時に登場するのが仲介エージェントである。家探しをする人にとって仲介業者は、救世主であると同時に、逃れられない負担でもある。エージェントは、どの家が空いているか、中国式住宅ではどこがリフォームされているかなどを熟知している。取引が達成すれば、エージェントの多くは、サービス料として一カ月分の家賃を要求する。
家主が仲介業者に連絡を取るのによく使われているのがチャットアプリ「微信(WeChat)」である。中国の隅々に広がったこのソーシャルメディアの登場で、電話はもはや時代遅れになりつつある。仲介業者はこのアプリを通じて取引を進める。
「Chunck」と名乗る礼儀正しい若いエージェントも「微信」の達人である。「微信」のプロフィール写真には、「Chicago」の文字の入ったTシャツを着て、トラのぬいぐるみを片手で抱いた「Chunck」の姿が写っている。薄暗いベッドルームやシャワーカーテンの写真を毎日のように送ってきて、早く行動するようにと催促してくる。
仲介エージェントとのコンタクトは通常、地下鉄とスクーターから始まる。家探しをする人は約束の地点に赴き――「雍和宮駅」のC出口だとかショッピングモール「ラッフルズシティ」の前だとかだ――名前を呼ばれるのを待つ。エージェントが来たら、バッグをしっかりとつかんでバイクに飛び乗り、第二環状線の車両の間を縫って進んだり、ギョーザ屋の前を走り抜けたりする。
勤務時間の融通が利かない夫を持つ私は、スクーターに乗って家を探しまわる役を演じなければならなかった。
家の下見はしばしば、団体旅行の様相を呈する。玄関のドアを開けると、仲介業者やブローカー、家主らが並んでいる。部屋の中には黄色いソファーや天井にまで届く大きな鏡などが見える。ある時には、魚の群れのように7人の後について行くことになった。「Chunck」は家探しをしているほかの人を連れてくることもある。
家の下見をするたびに、北京の文化や生活リズムが垣間見える。そこにはルールはない。ある日は、同じ物件で4つの値段が呈示されるのを耳にした。ある夜は、一家で夕飯を食べている光景に遭遇した。台所から出てきた私の後ろには、よちよち歩きの子どもとニンニクの香りが付いて来た。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年1月5日