戦後の国民党統治が親日感情を増幅させた
台湾の親日感情の移り変わりを韓国のそれと比べてみよう。戦後渡台した大陸系移民者と、戦前から台湾で暮らす本省人の間に複雑な関係が存在することが、韓国の場合と大きく異なるのが分かる。1949年、大陸での統治権を失った蒋介石率いる国民党政府は台湾に遷った。蒋介石にとって、当時の台湾は、かつて日本に植民地支配されていた地、というだけでなく、国民党が政権を握れる反共産党の最後の砦でもあったのである。これまで国民党・共産党の内戦において後方であった台湾が、その時を以って前線地帯となったのである。台湾に遷った蒋介石政府は、国民党政権を安定化させ、台湾における日本植民支配時代の名残を撤廃していった。学校教育や政治思想教育において、蒋介石による日中戦争時の功績が大々的に宣伝され、この世代に育った台湾人に、日本=中国への侵略者というイメージが植え付けられた。
この時期、国民党政府による台湾の統治は、日本の植民地支配のやり方を受け継ぐものであった。そのため、戦後に渡台した大陸系移民者と、戦前から台湾で暮らす本省人の間にいさかいが生じ、そのことから台湾人の対日感情に大きな転換が訪れた。日本の植民地支配時代の台湾では、生活や教育上、台湾人は不平等な扱いを受け、また信任の対象とされなかった。こうして不満が重なり、台湾人の日本に対するイメージは、マイナスなものになっていった。だが、戦後、台湾が国民党政府に統治されるようになると、本省人は日本の共犯者と見られ国民党から蔑まれた。こうしたやるせなさゆえ、本省人の「台湾を植民地支配した日本=悪者」という認識が変化することになり、それが戦後に渡台した大陸系移民者らの認識と異なるようになっていった。
この変化は、現在の「日台関係」に大きく影響することになる。今の日台関係の源を突き詰めると、このような心理的な変化は無視できない重要な要素になっている。こうして、「日本=悪者」のイメージが「日本=台湾近代化の功績者」に変わり、日本メディアの一部が今の台湾を語る際に、過去の悪行(=植民地支配)があたかも台湾にどれほど貢献したかのように美化された話にこじつけている。