腐敗取り締まり規定、より充実化
腐敗問題が日増しに複雑化する中、2010年の腐敗対策にも大きな進展がみられた。
(1)中央政府は個人報告制度をさらに整え、指導者幹部による個人関連事項の報告に関する規定を用いて、官僚・指導者幹部の所得申告に関する規定の不備を補った。1994年の全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)で『財産申告法』が立法計画に盛り込まれると、関連部門は1995年に『党政機関県(処)級以上の指導者幹部の所得申告に関する規定』(中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が発表)、2006年に『党政機関県(処)級以上の指導者幹部の個人関連事項に関する規定』を制定・公布した。この2つの規定はいずれも幹部の個人事項の報告を見据えたもので、重要な党内法規の形で公布・実施された。
(2)2010年7月11日、中国国営の新華社通信は『指導者幹部の個人関連事項の報告に関する規定』を全文掲載した。これによると、▽人事部門は幹部の監督と選抜採用において、指導者幹部の個人関連事項に関する資料を閲覧することができる(第12条)▽指導者幹部が事実に基づいて申告しなかった場合であって、情状が最も深刻なときは罷免することができる(第17条)--ことが新たに定められた。
(3)2010年12月29日、国務院新聞弁公室は腐敗対策分野で初の白書「中国の腐敗対策および清潔な政府建設」を発表し、腐敗対策と清潔な政府づくりの基本的な状況を全面的かつ体系的に説明。中国共産党と中国政府は断固とした態度で腐敗対策に取り組み、清廉な政府づくりを強化するとともに、▽根本的な是正▽総合的な対処▽摘発・予防の両立▽予防の重視--の方針を貫いて、健全な腐敗対策制度を構築することにより、中国の国情に見合った特色ある腐敗対策・清廉潔白の道を見出した、と強調した。
(4)贈賄者に対する処罰を強化する。2010年5月18日、中国の家電販売大手「国美電器」の黄光裕・元取締役会長が、不法経営、金融商品取引法違反(インサイダー取引)罪、贈賄罪に問われ、実刑14年、罰金6億元(約74億円)、資産2億元(約25億円)の没収を命ずる判決を受けた。中国のここ数年の大規模な腐敗事件で、贈賄罪に重刑が下されたのは初めて。ここから、贈賄の厳罰化に向けた関連部門の決意が見て取れる。
(5)2010年、中央政府は幹部採用に関する事項について多数の措置を相次いで打ち出した。これら措置は相互に連携し、事前報告、事後評価、離任調査、違反・職務不履行の追及を求める幹部選抜採用監督制度を構成している。
(6)『反腐敗法』の立法が改めて取り上げられた。2010年初め、全国人民代表大会の代表、韓雲弁護士は全人代で立法議案を提出、2010年末には清廉政治会議で具体的な中身が示された。その中には▽公務員の贈答品の受け取り範囲ならびに最高限度額の規定(最高300元<約3700円>にすることを提案)▽公務員の副業と離職後の行為の限定▽親族回避制度▽公務員財産申告制度の規定▽清廉な政府の権限を専門的に行使または兼ね備える腐敗対策組織の指導機関に関する明確な規定--が含まれる。
(7)告発者保護制度が体系的に設計された。同制度には具体的に▽告発手続きの明示と結果のフィードバック制度▽告発者の緊急避難ホットライン制度および緊急避難場所制度▽告発者の損失補償と褒賞制度--の3つの制度を含めることを専門家は提案している。
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