文=付小為
先日の福島第一原子力発電所による放射能汚染水の海洋排出は、中国を含む周辺国からの強い懸念を招いた。昨日より、福島第一原発は汚染水の排出を停止し、放射性物質の拡散防止のための高濃度汚染水の回収を開始している。
排出行為について、東京電力は低濃度汚染水の排出と説明しているが、その放射能濃度の数値は明らかにしていない。未だ重大な環境破壊には至っていないものの、海洋に排出された汚染物質が周辺国家の海洋の安全を脅かす可能性、更には、海流の循環に伴い地球環境に影響を及ぼす可能性があるのは確かである。
注目すべきは、今回の危機をまねいた東京電力が、世界最大の民間原子力発電所運営会社という点である。危機処理の過程において、東京電力が資産保護のために事故の真相を隠蔽して報告したことで、日本政府は原発事故対応の最も重要な時機を逃してしまった。事実、東京電力の事故隠蔽行為や報告データ改竄行為は近年も度々報道され、社会全般から疑念を持たれている。
過去には、一企業の行為が全国的、ひいては世界的な危機をもたらすというのは、想像が難しいことであった。しかし、工業生産の超大規模な発展に伴い、人類による科学技術の利用は未曾有のレベルにまで達し、一部の大企業が携わる領域及びコントロールする技術は、全人類の安全の命運と高度に連携するようになった。このような巨大な安全の危機に対して、企業は必ずしも相応の危機管理能力や損害発生後の責任の負担能力を備えているとは限らないのである。