文=コラムニスト・陳言
「今後、日本の政局を左右するのは民主とでも、自民党でもない。おそらく松下政経塾だ」。日本の政界と深いつながりをもつ企業家、吉川明希氏はこう語る。
◇日本独特の政治と商業の結合
1979年、松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助氏は70億円の個人資産を投じて私塾を設立した。「松下幸之助は当時、経済で大きな成功を収めた後、政界に辛抱強い政治家が減っていくのを予見し、政治家、企業家、社会のリーダーを育成するため、自らの資産を投じてこの私塾を設立した。松下氏は先見の明があり、将来の日本の政治問題を早くから洞察していた」と吉川氏は話す。
日本には独特の政治と商業の結合があり、名声と人望のある企業家が直接的には政治に参加せずに、私塾を設立して次世代の政治家を育成する。
松下政経塾出身の衆議院議員は31人、参議院議員は7人。よく知られている人物では、野田佳彦氏や逢沢一郎氏のほか、原口一博氏、高市早苗氏、前原誠司氏らがおり、数々の大臣クラスの政治家のほか、相当数の副大臣クラスの政治家を輩出している。
◇演説が得意な松下政経塾出身者
同塾では厳しい訓練を受ける。一期生の野田氏は卒業後、選挙区の駅前で街頭演説を毎日行い、それを24年間続けた。「政治家は国民と直接交流し、国民のニーズを直接理解する必要がある」と野田氏は語る。そのすぐれた演説力は党代表選の終盤でも頭角を現した。
吉川氏は「松下政経塾出身者はみな演説に長けている」という。ただ、だからといって実務に長じているとは限らない。「彼らは特に街頭演説が好きで、市民の集まりには参加したがらない。市民の前で自分の特徴や能力を強調するが、人々がすぐに解決してほしい問題は聞きもしない」と指摘する。
◇野田氏と前原氏は「軍事通」