文:呉建民氏
オーストラリアの著名学者、元国防副次官のヒュー・ホワイト氏は11月25日、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に『オバマ・ドクトリン』と題した文章を寄稿し、オバマ米大統領のアジア訪問は「オバマ・ドクトリン」の誕生を意味するとの見方を示した。ホワイト氏は、「オバマ・ドクトリン」と「トルーマン・ドクトリン」を合わせて論じ、「トルーマン・ドクトリン」は旧ソ連を封じ込めるもので米ソ冷戦の開始を象徴したが、「オバマ・ドクトリン」は中国を封じ込めるものだと主張し、「これは大きな過ちで、米国はこの戦略を堅持すれば重い代償を支払うことになる」と指摘した。
「オバマ・ドクトリン」の背景下で、新たな冷戦は起こるのだろうか。
この答えを出すには、まず現在の世界の動きを把握する必要がある。国際情勢が複雑に入り組み、各種の新しい動向が現れ、世界の動きを把握するにはポイントを押さえなければならない。戦争と暴力革命の時代から平和と発展をテーマとする時代に入った。平和、発展、協力は妨げることのできない時代の流れになっている。当然、世界には冷戦、対抗、衝突などの別の流れもある。
次に、冷戦は双方がその気にならないとできない。米ソの冷戦は、双方が世界覇権を争っていたために起きた。中国に世界覇権を争う気はなく、覇権を唱えないことは中国の国策の一つである。また、「平和、発展、協力」と「冷戦、対抗、衝突」の2つの流れの中で、中国は「平和、発展、協力」を確固不動として支持し、「冷戦、対抗、衝突」を断固反対している。中国が米国と冷戦を行うことは決してない。
さらに、今日の中米関係は、昔の米ソ関係と本質的に異なる。当時の米ソ関係は覇権争いが中心だったが、中米関係は協力が中心である。米ソ間には経済相互依存関係がなく、二国間貿易額は最大でも年40億ドル程度に過ぎなかったが、中米間の貿易額は4000億ドルに達している。ソ連は米国債を保有していなかったが、中国は米国債の最大保有国である。米ソは絶えず足場を掘り崩し合い、「代理戦争」を行ったが、中国は過去30年あまりの台頭において経済成長の成果を米国を含む世界と分かち合い、互恵・ウィンウィンを実現した。中国のこのやり方は決して便宜上の措置ではなく、平和的発展戦略で決められたことである。
11月12日、中国の胡錦涛国家主席は米国のホノルルでオバマ大統領と会談した際、「中米は2つの大国で、協力強化は唯一の正しい選択だ。相互尊重と互恵・ウィンウィンの中米協力関係を発展させることは、両国の共通の利益、責任、戦略に基づいて決定した重大な政策である。双方はこの決定をしっかり押さえ、中米の協力関係の構築と安定した発展を長期続けていくべきだ」と述べた。この言葉は、中国の対米方針が確固たるものであることをはっきり示している。
成長の肝心な時期にさしかかっている中国にとって、21世紀の第2の10年はきわめて重要である。国際情勢がどのように発展、変化しても、中国は平和的発展の道を歩む方針や、互恵・ウィンウィンの開放戦略を変えてはならず、世界の流れに沿って路線を変更してはいけない。中国が新たな冷戦をあおる者の罠にはまれば、世界を災難に導き、歴史の流れに逆らい、失敗することになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年2月29日