この他にも、中国は今、人民元切り上げのプレッシャーに直面している。中国国際貨幣経済研究センター主任で対外経済貿易大学の孫華妤教授は、以下の見解を示した。国際決済銀行(BIS)が6月15日に発表した実効為替レートによれば、2010年1月から5月にかけて、ユーロ圏全体では7.84%下落、ドルは2.62%上昇、人民元は5.49%上昇している。人民元対ドルの二国間の名目為替レートは変わりないが、人民元対ユーロ圏の実質実効為替レートの上昇は13.33%にもなり、これは、対ドルの実質実効為替レートの上昇が2.87%となるに等しい。人民元対ユーロの実質実効為替レートの大幅な上昇は、中国のヨーロッパ市場に対する輸出の回復的成長を低下させ、輸入増加を促進すると同時に中国製品の非ユーロ圏市場におけるユーロ圏製品との競争を激化させることになる。
専門家の分析によれば、高止まりしたコストは貿易会社の利潤率を圧迫する。これは、中国輸出製品の価格が国際市場で決定されており、メーカーが増加したコストを他に転嫁できないためである。中国対外貿易は「格安時代」に別れを告げる時が来ているのかもしれない。この過程で、実力を持たない企業は淘汰され、これまでの対外貿易構造は調整を余儀なくされ、長きに渡って実施されてきた中国製造業の低賃金、高消費、高排出を頼りに推し進められた成長モデルは継続が難しくなるだろう。
商務部研究院の梅新育研究員は、次のように話す。中国経済の発展に伴う労働力や土地等のコスト上昇は必然的なもので、人為的に避けられるものではない。企業はもはやこれまでの格安労働力時代の戦略を通し続けることはできない。政府、企業、社会が一体となり、これまでの低コスト労働力モデルを改革するという共通認識を持つ必要がある。
王晋斌教授も、次のように述べている。90年代中期以降、製造業の輸出超過は貿易超過の90%以上を占め続けていた。対外貿易において中国経済が第一に選んだのは、利益ではなく、就業問題であった。今振り返ってみると、ここには貿易条件の悪化や資源の大量消費助長等の弊害があり、改善が必要である。