現在世界で科学技術の最先端を走るのはデジタル技術であり、デジタル技術が先導するこの新経済時代にあって、日本は蚊帳の外である。
1990年、日本とヨーロッパ、アメリカはそれぞれ全く異なる方向に向けて新時代のテレビを作り出そうしていた。日本は当時すでに18年の資金と労働力を注いで高解像度テレビの開発を進めていたが、1991年にアメリカが動き出すや否や、みながGENERAL INSTRUMENTSを追いかけるようになった。そして、同社は一躍デジタルテレビの先駆者となった。
デジタルテレビとハイビジョンテレビの競争は、単なるテレビのメカニズムの争いではなく、デジタルとアナログの争いだったのだ。
あるとき日本はふと気づいて、デジタル技術で縁取られた世界を見渡してみた。すると、かつて世界第二の地位にまで登りつめた日本が、かつてアメリカに向かって自信たっぷりに「ノー」を突きつけた日本が、アジアという狭い範囲に限って見てみても、インドに後れをとり、長年日本の後塵を拝してきた中国にも追いつかれようとしていた。
デジタル時代に発言権を失った日本が唯一我がもの顔で振るまえる分野、それは、そのむかし無敵を誇り今は主流から取り残された「精密製造」だけなのである。
時移りし今、「精密製造」にしがみつき、時代から取り残され淘汰された結果として、災難がトヨタの身に降りかかったというわけである。
1990年代以後、日本は長期的な経済衰退を続けている。1997年の秋、大型金融機関が破綻して、株価の暴落、急激な円安が引き起こされ、金融と経済の衰退がもたらされた。それ以降日本経済全体が立ち直ることはできていない。