中国は日本を追い越して世界第二の経済規模となった。この事実を見て、このまま中国がアメリカから世界第一の地位をうばうのは必至だと考える人々がいる。野村證券も、中国の国内総生産が10年そこそこでアメリカを超えるだろうと予測している。経済学者のロバート・フォーゲルはこう予言する。2050年までに中国経済による国内総生産は世界の40%を占めるようになり、一方でアメリカの同比率は14%というとるに足りない数字まで後退するだろうと。
確かにアメリカ人にとって地位の低下は懸念されるところだが、中国が世界の支配的地位に登りつめるだろうという見方は、いささか大げさだと言わざるをえない。20年前に日本に対しても同様の懸念を抱いたことを思いおこせば分かることである。一国の経済が極めて急激な成長を見せたとき、それが長くは続かないのが普通であるのに、大抵の予測はその急成長経済を基にして考察されるのだ。最終的には、コストの増大や国内のマイナス要素、その国特有の問題などで、経済成長が妨げられることになる。逆成長を招く事例さえある。
一方で、世界で傑出した位置を維持するためにアメリカが講じることのできる手段はかなりあり、この先10年20年に限らず、21世紀半ばまで今の地位を維持することが可能である。こういった一般論からかけ離れた結論を裏付ける理由は、次の五つである。