四、中国はこの先10年、人口構成が急速に高齢化していくこと、労働力が先細りになっていくことによって、経済成長の速度が大きく鈍化することが考えられる。2050年までに、アメリカの人口構成において60歳以上が占める割合は四分の一となるにすぎないが、中国の場合はそれが31%に達する。中国の老年人口は4億人を超えるだろうとされているのに、社会保障制度はないに等しく、先代を扶養する世代の人口も少ない。
五、独裁政権による社会は、発展初期は急速な伸びができるが、時間がたつと、その成長はより開放的な社会に比して劣るようになるのが常である。専制国家の経済は微妙な問題に直面することになるからだ。聡明で自立的なインドの企業経営者に比べ、中国の企業経営者は他力本願の傾向が強いという調査結果もある。中国の国家権力が傲慢であるということで、いくつかの発展途上国や外国の企業が取引しやすい投資対象と貿易相手を探すことになるかもしれない。
問題は山積しているが、中国の底力を呼び起こすことがやはり我々の時代の重要な任務となるだろう。とは言っても、中国が世界の覇権的地位につく可能性は小さい。よく見落とされるのは、この国の政治問題は日増しに深刻さを増す不平等社会に端を発しているという事実である。
この先10年のうちに大きな逆境にさらされることが想定されるのは中国であり、いま不景気にあるアメリカではない。アメリカの最大の敵が中国ではなく、アメリカ自身であることは、いずれ事実が証明するだろう。(筆者:アメリカ・チャップマン大学研究都市未来学の学者、イギリス・レガトゥム研究所兼職研究員フェローのジョエル・コトキン氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年9月3日