最近、中国で起きた一連の社会的事件が世界で熱い議論の対象になっている。海外メディアの眼に映る中国人はこうだ。何をするにも名誉と利益を求める。資産管理は世界一で一夜にして巨万の富を築く。結婚するなら家と車がなければならない。バスに乗る時でさえいつも割り込みをする。中国人は今や世界で最もせっかちで最も忍耐力のない人々である、などだ。だが中国人の「時間観」を研究したことのある英国人学者マーティン・ジャック氏(東アジア文化)はこうした見方に疑義を呈し、「すべての問題が本当にペースの誤りなのだろうか」と話す。半世紀ほど前、中国人に対する世界の定義は「時間無視の民族」というもので、一部の西洋人は時間無視の中国人は世界で立ちゆかないとみなしていた。英国で行われたある研究によると、世界全体が「ペースの速い生活」に向かっており、都市部の人が歩く速度は10年前より平均で10%速くなったという。速度アップの上位国には、急速に発展するアジア国家が数カ国並んだ。日本に暮らす中国人学者・庚欣氏によると、緊張感あるペースの速い生活は今の中国人にとって避けられない運命だ。中国は急成長期の青年のようであり、一連の問題はすべてが急速な成長による誤りが原因なのではなく、栄養のアンバランスが原因なのだ。日本は数十年前に高度成長がもたらす「成長痛」を経験したが、日本人が本当に懸念し、絶望さえするのは成長ペースが止まった「失われた20年」だ。「環球時報」が伝えた。
△現代中国人の生活のシンボルは「スピード」
「環球時報」はこのほど、中国を何度も訪れたことのある日本の老人にインタビューした。改革解放前の中国も何度も訪れているこの老人は次のように述べた。当時、中国で中国語を勉強したものの基本的には話せるようならなかったが、ある単語は非常によく覚えており、喜んで使っていたものだ。それは「リュウタツ」(散歩する)という言葉だ。あの時代に帰りたいと思う中国人はいまいが、日本人の目から見ると、この単語にはある種の悠々とした暮らしぶりが凝縮されている。当時の日本人もペースの速い生活に悩んでいたのが主な原因と考えられる。当時の日本人の生活では「早飯、早トイレ、早歩き」などということが言われていた。中国で改革開放が実施されると、深セン市(広東省)で中国人の伝統的な考え方をもじった「時は金なり、効率は命なり」というスローガンが生まれ、これ以降、中国人の生活のスピードアップが始まった。
「スピード戦争」で中国人は目覚ましい成果を上げ、経済の高度成長を遂げる中国は、今や世界2位の経済強国に成長した。だが最近の一連の事件が、速度追求の代償は小さくないことを示している。
マレーシア紙「星洲日報」は7月28日付記事の中で、中国人はスピードに対する崇拝ぶりを考え直すようになった。実際のところ、速いリズムやスピードの強調は現代中国人の生活のシンボルになっている、と報じた。また別の記事の中では、中国人は今や時間を追いかけることに熱心で、どこでも速いリズムを要求する。携帯電話の呼び出し音が鳴り、電話が速く速くとせき立てる。急速な進展を最も好み、刷新を是が非でも追い求める。評論では一番に発言したがり、手紙は速達で送り、写真は同時プリントを求め、車に乗れば高速道路を走り、高速鉄道を選ぶ。何をするにも名誉と利益が両方得られることを最もよしとし、資産管理は一夜にして巨万の富を築くことを最もよしとする。結婚するなら家と自動車が必要不可欠だ。一部の中国人はいつもバタバタしており、日々を戦いとみなして暮らしている。こうした人々はスピードの速い生活を送ればより多くの金が稼げると考えており、機会をつかめなければ、社会から放逐されることになるのを恐れている。手に入るのは確かな道理だけだ。だが、多忙な日々の中で、生活の方向を見失ってはいないだろうかと胸に手を当てて考えてもみるのだ。