しかしよく考えてみたい。このような短期的な刺激策を採れば、確かに日本の自動車産業が持つ巨大な余剰生産力をカバーすることはできる。しかし、日本経済全体の復興がなければ、日本の自動車産業が国内で売上を上げるのは難しいだろう。
今年の3月以降、わずか8カ月強の期間で円はドルに対して12%上昇した。過去三年間でみれば30%以上の上昇となっている。止まらない円高が日本の自動車産業に深刻なダメージを与えている。同時に産業チェーンの生産構造にも影響を与えている。事実、円の上昇が与える影響は、東日本大震災の衝撃をも超えるものとなっている。
昨年末、まだ1ドルが80円余りだったころ、トヨタは言い放ったものである。もし政府が円の上昇を阻止しなければ、トヨタは日本以外の地区に生産拠点を移し、一部車両の輸出を二年以内に停止すると。この言葉だけでも、輸出に依存する日本の自動車産業にとって円の上昇がどれだけ大きな破壊力を持つのかがうかがわれる。