日本の「モノづくり」信仰が災いに
他の国と違い、日本企業の革新を長期的に阻んでいるものは、日本に根付いた「モノづくり」文化である。多くの日本人が、日本はソフトウェアや金融の才能はないが、「モノづくり」には適していると信じてきた。しかし、製造業がひとたび困難に陥ると、戦後日本の成長の大部分を担った産業が不可逆的な衰退に陥りかねず、日本が20年間にわたる経済停滞から抜け出す機会や大量の労働者、日本の尊厳までもが道連れになって失われる恐れがある。
「日本全体のアイデンティティーが製造業と結びついている」。ソーシャルゲーム大手グリーの創業者、田中良和氏はこう言う。「実際に形のあるモノを生産していなければ、何か怪しいことをやっているかのように扱われる」。これは日本の科技社会に流れる格言と一致している「真の武士はソフトウェアのプログラミングはしない」。
これは日本社会のソフトウェア文化に対する冷淡さの表れである。ソフトウェア文化とハードウェア文化は全く異なるものだ。ハードウェア文化は他社と最後まで勝ちを争うが、ソフトウェア文化は他社と手を組むなどして自社製品の市場シェアを獲得する。相手との競合をさけつつ、利益を出すのがソフトのやり方だが、これは明らかに日本の得意とすることではない。
政策を制定することで有名な日本政府でさえ、この肝心な問題に関しては方向性を見失っている。政府はこの支離滅裂な電子産業の再編を通じて「チャンピオン企業」を生み出そうとした。政府はここ最近、ソニーや東芝、日立などの子会社を統合させ、韓国や中国、台湾などの企業と競争させようと狙った。