▽システム全体をM&A 三洋の「小網」からハイアールの「大網」へ
ハイアールの今回のM&Aの対象は三洋の白物家電業務全般にわたっており、企画、開発から製造、販売、アフターサービスといった事業システム全体に及ぶ。システム全体のM&Aの最大のメリットは、M&Aのシナジー効果を速やかに発揮できるところにある。ハイアールが三洋の一部の業務ユニットを買収するだけだったとすれば、当該の業務ユニットは新しい「主人」のあらゆる部門と結びつかなくてはならず、必然的に時間コストと管理コストが増大し、短期的には目標の実現を保障することはできない。全システムのM&Aは、三洋の白物家電という「小さい網」をハイアールという「大きな網」に投じることと同じであり、すべての業務ユニットは何の障害もなく運営を進めることが可能だ。
システム全体のM&Aはすべてこれまで通りというわけではなく、ハイアールは買収した6カ国の8企業の業務を整理した後、内部で改めて再編を行い、最終的には日本の京都と東京にある二大研究開発センター、湖南電機(日本)とハイアールのベトナム、タイ、インドネシアにある計4つの製造拠点、および6地域の現地対応型の市場営業販売の枠組からなるシステムを形成する見込みだ。ハイアールが買収したのは一つのシステムであり、技術、工場、チーム、市場が備わったシステムだ。ハイアールは世界の白物家電トップの地位を保ち、スケールメリットを得ており、今後は量の変化から質の変化に移行していくとみられる。
日本最大の家電量販店・ヤマダ電機の一宮忠男社長は、ハイアールの動きがこれほど迅速だとは思わなかったと話す。ハイアールは3千の販売店で、日本人向けにデザインした33種類の新製品のサンプル9万点を瞬時に入れ替え、日本の家電市場で前例のないことを成し遂げたのだ。