記者:自社開発を堅持するノキアや、伝統的に技術力のある日本企業が、市場競争で敗れる。その一方で、自社開発をせずにマーケットだけを知る企業が勝者になるのは皮肉な現象にも見えます。競争力に対する一般常識をひっくりかえされた気もします。
蘇勇:企業経営においてはよく見られる現象です。優位性のあるものほど、悩みの種になりやすいのです。日本の電機メーカーはかつてトップの地位にあった。だからこそ、自らの強みを捨てようとしなかった。これはかつてのGMにあった病と似ています。GMは、小排気量車とエコカーが将来の市場趨勢になることが分かっていました。しかし彼らは図体の大きい、大排気量の車を製造する路線を捨てきれなかった。
コダックも同様です。1970年代初め、コダックはデジタルカメラ技術を開発していた。しかし彼らはそれを市場に広めようとはしなかった。伝統的なカメラ市場における優位性を捨てたくなかったためです。その結果、せっかくの先行者優位は失われ、最後には破産という悲惨な末路を歩んでしまいました。相反して市場のガリバーではなかった企業は、そのような悩みもなく、従来路線にこだわる必要もなかったため、積極的な開発を行って新市場開拓のチャンスをつかむことができました。一旦ターゲットを絞ることができれば、組織的に生産、営業を行って、一気にトップに躍り出ることができるのです。