業界筋は、中国の労働者賃金の止まることのない上昇が「メイドインチャイナ」のコストを押し上げているが、もしフォックスコンが「ロボット計画」に成功すれば、賃金高騰によるリスクを抑え、「グローバル戦略」が実現するとの見方を示す。フォックスコンは120億ドルを投資してブラジルに工場を建設することを明らかにしており、ベトナムやインドへも布石を打ち始めている。
厳格すぎる管理で評判を落とした郭台銘氏は、「ロボット戦略」で徹底的にフォックスコンの企業イメージを変えようとしている。「私たちは、人間が機械にコントロールされるのではなく、人間がロボットをコントロールすることを望む。単純な反復作業をロボットに与えることで、従業員を解放したい」と同氏は述べる。
これは、産業構造のバージョンアップに向けた潮流というべきだろう。「今後中国が製造王国になるためのポイントは、“人口ボーナス”を“頭脳ボーナス”に変えることだ」と郭台銘氏は言う。ロボット導入によって、労働力は付加価値の高いものが求められていく。つまらない仕事が嫌いな1980年代生まれや1990年代生まれの従業員たちには、ロボットをコントロールするソフトを学んだり、応用方法や修理を学んだりすればいい。それによって、彼らはロボットのエンジニアになれると、同氏は公の場で述べている。
現在、メイドインチャイナのロボット武装の速度は、欧米とさほど引けを取らない。2008年、賃金コストが上昇したことにより、工業ロボットが製造業において頭角を現してきた。同年の販売数は7500台に達したが、この数字はそれまでの24年間の総販売量の3分の1にあたるものだ。