過去20年間に米国は変化し、中国も変化してきた。こうした変化にともなって、両国の発展の状況やパワーのバランスも変化し、中米関係に新たな影響を及ぼすようになった。米国の政党政治や利益集団による政治がもたらすマイナス側面が、米国の政治的エリートの制度に対する優越感を失わせ、米国の価値観を他国に広めようとする意欲を低下させている。人権や価値観で中国を揺さぶるのはもはや時代遅れであることは明々白々だ。アフガニスタンとイラクでの戦争を経て、米国では厭戦ムードが広がっており、折悪しく発生した経済危機により国防費は削減を余儀なくされている。こうした状況の中で、中国の軍事的脅威を売りつけようとしてもセールスポイントにはならない。厳しい経済情勢と経済問題に対する人々の高い関心を受けて、大統領候補のミット・ロムニー氏は経済問題で中国を取り上げることを選び、バラク・オバマ大統領を攻撃する材料にするとともに、注目を集めることを狙った。
当然のことだが、中国がテーマになることをロムニー氏の選挙対策のせいだけにするのは不公平だ。実際のところ、現在は米国の与党も野党もこれまでになく中国に関心を寄せている。オバマ氏とロムニー氏による最終討論会で、「中国の勃興と明日の世界」がテーマの一つになり、演説の作者は中国だけを取り上げて未来の世界の方向性と関連づけた。これは今までになかったことだ。全体としてこうした動きは中米関係にどのようなシグナルを発しているのだろうか。
第一に、中国は米国が高い関心を寄せる国になりつつある。これまでは中国の米国に対する関心が米国の中国に対する関心をはるかに上回っていた。だが米国にとって中国の重要性が高まるのにともない、米国は中国の発展にますます注目するようになり、米国の利益に対する中国の影響に関心を寄せるようになり、中国がいつ、どのように米国を追い抜くかに注目するようになった。中国は今後、これまでになく注目を浴びるようになることに慣れなければならない。