東京経済大学教授・周牧之
21世紀に入り9・11同時多発テロ、リーマンショック、ヨーロッパの債務危機など世界を震撼させる出来事が相次いだ。危機と低成長に苦しむ先進諸国をよそに、中国は高度経済成長を続けた。逆風下での大発展を支えた最大の原動力は都市化である。中国の20世紀は都市化の世紀であった。
世界の都市人口は100年間で2億5000万人から10倍以上の28億人にまで膨れ上がり08年に初めて農村人口を超え過半数となった。国連の予測では50年に世界人口は90億人に、都市人口は60億人に達する。地球はまさに正真正銘の「都市惑星」になろうとしている。
中国は建国以来、都市開発用地の抑制と人口移動の抑制を用いた「アンチ都市化」政策をとってきた。20世紀に入ってからようやく都市開発用地の緩和など都市化政策を取り入れた。特に06年から施行された第11次5カ年計画ではメガロポリス政策を明確に打ち出し抑制されていた都市化のエネルギーが大爆発した。
中国の都市化はその規模やスケールの大きさにおいて、21世紀世界の都市化のけん引役となる。億単位の人口が農村から都市に押し寄せ、既存都市の拡張とニューシティー建設の動きが全国規模で進んでいる。特に上海・江蘇省・浙江省を中心とする「長江デルタ」 、香港・広東省を中心とする「珠江デルタ」 、北京・天津・河北省を中心とする「京津・冀」 の3地域では巨大なメガロポリスが形成されている。3大メガロポリスにけん引された形で中国経済は爆走している。
しかし、これまでの中国の都市化は農民工をはじめとする人口移動問題、急速なモータリゼーションによる交通問題、環境問題、エネルギー問題、土地の囲い込み問題、住宅バブルなど数多くの課題を生じさせた。とくに自然破壊や大気汚染などの環境問題は日々深刻化している。昨年からの中国北部一帯におけるPM2・5の大発生は、環境への社会的な問題意識を引き起こした。大国ゆえに中国の環境問題は地球レベルの大課題になっている。
中国が直面する都市化と環境という2大問題に挑むものとして、江蘇省鎮江市で生態ニューシティー建設モデルプロジェクトが中国国家発展和改革委員会と江蘇省政府の主導で12年にスタートした。長江のほとりに位置する鎮江市に220平方キロのエリアで100万人規模のニューシティーを建設する計画である。