日中経済協会北京事務所副所長 高見澤学
文=日中経済協会北京事務所副所長 高見澤学
◆ 複雑化する経済運営
今日、世界を見渡せば、科学技術の進歩や人々の意識の向上に伴って、世界が空間的にも時間的にも縮まり、グローバル化の進展によって、より多くの人が文化的生活をおくれるようになったようにみえる。その反面、国際政治が複雑化し、より危険で大規模な兵器が開発され、各地で内戦やテロが絶えず勃発している。経済においても同様で、より豊かな生活を享受できるようになった一方、貧困に苦しむ人々は一向に絶えない。経済体制が複雑になればなるほど、矛盾も増える傾向にある。このことは中国においても例外ではない。
改革開放を進め、海外からの資金と科学技術を梃に高度経済成長を遂げ、世界第2位の経済大国となり、国民の生活水準が向上する一方、大気汚染や水質汚染等の環境問題が顕在化、地域間・住民間の所得格差が拡大し、人口の過密化・過疎化や車社会に伴う渋滞等の都市病が各地で広がりをみせている。
また、経済のグローバル化やIT化に伴って、国際的な株価・債権・為替等金融面での変動による影響も以前に比べ大きくなるなど、これまでに経験したことのない変化が生じている。このように、ますます国家による経済運営の舵取りが難しくなっている中で、今回の中央経済工作会議が12月18日から21日まで北京で開催されたのだが、中国共産党による今後の経済運営の基本的方向は従来と大きく変わっていない。中国がこれまでの高成長から中高速の安定成長への過渡期を迎え、より中長期的かつマクロ的な観点から政策を策定せざるを得なくなっている。