◆ 中央経済工作会議の主要な論点
今回の中央経済工作会議に先立ち、今年10月に開催された中国共産党五中全会で党が提出した13五計画の建議では、経済運営の重点を構造改革の推進と経済の健全な持続的発展の促進に置いている。今回の経済工作会議でも、この方針を受けた議論がなされたことは間違いない。従来のような国家主導で推し進めることができた量的拡大による経済発展は、基本的には人口ボーナスによって生み出された需要を満たすべく、国が方針や計画を決め、資金は国家財政によって賄うことにより国民経済を動かすことができた。
しかし今では、量的拡大による経済発展は矛盾を残したまま終焉を迎え、その矛盾を解決すべく、経済の質的向上による発展が求められているのだ。このことは先進国においても直面している問題であり、解決策を巡って試行錯誤を繰り返しているのが実情であろう。世界経済の低迷が続き、一向に回復の兆しがみえない原因もここにあると思われる。今回の中央経済工作会議では、先ずは総需要の適切な拡大と供給側の構造改革を目指すとして、安定的なマクロ政策、産業政策の方向付け、活性化されたミクロ政策、改革政策の実施メカニズム、社会政策の底上げの5大政策を提起している。ただ、今の拡大・複雑化した経済の下では、国として出来ることには限界がある。
今後の経済運営に当って特に重要なのは、民間の活力をどう実体経済に活かせるかにある。財政・金融面でのマクロ政策、新成長産業への奨励策、社会保障に係る政策など、実質的に政府が行う政策の効果は、それが有効か否かを含め比較的明らかだが、市場環境の整備など民間の力を引き出すための施策は容易ではなく、その効果も見えにくい。だが、市場原理を利用して経済の好循環を軌道に乗せるには、民間の力を充分に引き出すことが何よりも大切である。これが新常態に至る第一歩となるだろう。