▽復興ぶりをみるにはより多くの指標が必要
PMIの好転は日本経済が復興しつつあることを物語るのか。劉研究員は、「それほど単純に判断できない」とし、その理由として、「PMIの好転は周期的要因と季節的要因によるものにすぎず、底辺からのわずかな上昇でしかない。またPMIは日本経済の一部分を示しているにすぎない」ことを挙げる。
日本経済をよりよい状況にみせている要因のうち、米国大統領選挙でトランプ氏が当選したことが最大の転換点だ。劉研究員は、「トランプ氏が次期大統領に当選すると、円相場が大幅に下落し、16年全体での円上昇がもたらした圧力を基本的に緩和した。日本経済には繁栄の兆しがみえ、日経平均株価は一時は約1万9千円まで値上がりし16年12月30日の大納会の終値は1万9114.37円となり、年の納めの終値としては20年ぶりの高値を記録した。金融の角度からみると、トランプ氏という「ブラックスワン」の出現が16年第4四半期(10-12月)の日本経済の成長ペースを好転させ、『アベノミクス』は絶体絶命の状況の中で希望を見いだした」と指摘する。
実際、トランプ氏が当選しなければ、日本経済の16年の動きはかなり深刻なものになったといえる。劉研究員は日本銀行(中央銀行)が16年1月にマイナス金利政策を打ち出したことについて、「経済活性化と貸出増加という目的を達成できなかっただけでなく、反対に銀行産業の利益と市場の活力を極めて大きく損なってしまった。その後、日銀は戦うことをやめ、10月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入し、人々の目をこれまでの量的緩和の規模から長期金利政策へと移し、再緩和の必要性を低めようとした。言い換えれば、この2つの『布石』は行き場を失った日本経済の苦境を示すものでもある」との見方を示す。