日本は長い間、同盟国であることを根拠に日米の利益が一致することを強調してきた。だがトランプ大統領は日米貿易に言及した際、「日本は米国をATM(現金自動預払機)にしている」と非難するとともに、「米国は巨額の資金を拠出して日本の安全保障を担ってきたが、日本は米国に大量の自動車を輸出して荒稼ぎをしており、道理が通らない」と繰り返し述べてきた。今年に入ってから、米政府は二国間貿易協定の改定を多くの国に迫っており、さまざまな事例から明らかなように、米国は同じやり方で日本に圧力をかけて譲歩を引きだそうとしている。
これから日本の対米交渉の困難がさまざまな面に現れるとみられる。まず、日本が一貫して市場経済と自由貿易体制を主張してきた姿勢が揺らぐことになる。茂木大臣は国際貿易とは企業の市場行為であり、政府が制限や干渉をしてはならないと繰り返し強調してきた。日本政府が米国の要求をのんで輸出を制限するなら、管理貿易体制への後戻りであり、日本の貿易の原則に背くことになる。
次に、関税率引き下げの問題がある。対米関税の税率を多国間経済協定の税率より低くすれば、世界貿易機関(WTO)協定の最恵国待遇原則に基づき、新税率はWTOの全加盟国に適用される。そうなると日本国内の農林水産品は深刻なダメージを受けることになり、農家への説明に窮するだけでなく、国会の審議で可決されることも難しい。おまけに日本は来年夏に参議院選挙があり、関税問題をうまく処理できなければ、安倍首相が率いる政権与党は危機に直面することになる。