僕らのトヨタは良いトヨタ

タグ: トヨタ リコール 評論 コスト 品質 不具合

発信時間: 2010-03-01 10:51:58 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 


そのように考えますと、1つ目の論点として、消費者の信頼を向上させるためのブランド価値上昇は、何か問題がおこったときに却ってそのギャップを引き起こすでしょう。信頼あるブランドが故に同じ問題を信頼ないブランドがひきおこすよりも、問題をより大きく深いものとして消費者にうけとめられてしまうようなものでしょう。こうした企業の意思決定如何によらず、自然に発生してしまうであろう信頼性と偶発的信頼失墜の偏重性のtrade-off関係(トレードオフ関係)を「reputation gap(噂・イメージギャップ) problem」とでもしておきましょう。

 

2つ目の論点としては、内部の資源配分の問題です。グローバル企業であればあるほどより一層その傾向は強まると思いますが、企業が内部資源を完全に適正に配置し、コントロールすることのコストや、またそうした企業内部の資源配置のための調整にかかわってくるコストなどの限界性があると思います。抽象的になりましたので、すこしだけ具体的に言えば、とある企業が、A国、B国、C国、D国、E国のそれぞれで生産工場を有し、それぞれの工場が並列的にときには補完的に製品を生産しています。また、同時にそれぞれの国で、その製品を販売しているとします。この場合、A国だけで製造し、A~E国すべてで販売する場合よりも調整が複雑であることが容易に想像出来るかと思います。生産や販売がそれぞれ複雑に絡み合いながら各国にまたがって管理されている背景には、単純な生産コストを低減させるということだけの問題ではなく、そこに調整管理コストが付加(増加)されることも考慮しながら、競争優位にたたなければなりません。本国A国だけで、小麦粉を調達し、生地をこねて、パンを焼いて、A~E国で売るならば、単純にコスト計算できますが、それと比較して、B国で小麦粉を5分の1の値段で調達し、C国で2分の1の生産コストで生地をこねて、D国で3分の1の生産コストでパンを焼いて、A~E国で売るならば、確かに単純な生産コストは低いですが、輸送量という明らかなコストの付加だけでなく、調整・管理コストの付加の計算が非常に複雑になるでしょう。

 

このようにして、企業は生産コストの低下とそれにともなって内部での生産の複雑性を増すごとに調整・管理コストが増加していくことのバランスをとりながら内部の資源を配分していくことになります。現在において、トヨタのような巨大なグローバル企業は少なくはありませんが、とはいえ、決して歴史的に統計がとれるほど多かったわけではなく、トヨタからすれば自分自身以上の「参考例」は少ないといえるでしょう。

 

こうした前提にたてば、トヨタの今回の問題は、他のグローバル企業でも例のないようなレベルで自然発生した「reputation gap problem」と、「生産コスト、生産複雑性調整・管理コストバランスproblem」の双方が考えられますが、僕は、前にも述べたように、後者については、トヨタは妥当かつ合理的であったと思っています。それよりも、前者の問題をみることができなかったのだと思っています。これは、世界ひろしといえども、参照することの出来るトヨタ並の超品質重視のグローバル企業がこれまでに存在しなかったことです。企業はreference group(意思決定の参照・参考となる企業群)を逐次チェックしながら、その競争優位のための努力をしますが、品質重視経営での先頭を走るリーダーたる世界のトヨタは「reputation gap problem」の存在を計測することができなかったのだと思われます。

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