「中国経済と日本企業2010年白書」要訳
6. まとめ
現在、在中国日系企業の改善要望点は、各業種により多少の違いはあるものの、共通して見られる内容が多く、以下の4つに大別できる。
① 法制度およびその運用の透明性向上
透明性は確実に向上してはいるものの、依然として多くの日系企業が困惑している。中国経済の発展に伴い各種法制度の整備が進められ、事業環境の変化が大きいこと、各種申請の手順や必要書類が煩雑なことなどから、各地方政府や現場担当者間で対応の違いが起きている。指示を徹底するとともに、教育・訓練の充実を図るなどにより、統一的運用が実施されることを強く要望したい。
② 中国内ビジネスにおける内国民待遇の徹底
WTO加盟により、中国のビジネス環境は大きく改善された。しかし依然として一部業種では外資系企業の独資が認められていないなどの障壁が存在している。また、CCC認証や政府調達法(意見募集稿)などにみられるように、明らかに外資企業が不利となる状況の発生が懸念される分析もある。法制度の制定に関しては、パブリックコメント期間を十分に与えていただくとともに、広く外資企業や業界団体などと意見交換する場を積極的に設けていただきたい。
③ 知的財産権保護の徹底
以前に比べ大きな改善は見られるものの、すべての日系企業にとり依然として大きな問題となっている。日系企業は自らの競争力向上のため、日々新たな開発にチャレンジしている。これが産業の高度化を生み、更なる経済発展を実現する原動力となっている。知財権保護が徹底されれば、日系企業の対中ビジネスがより拡大することは間違いなく、また自主イノベーションによる経済発展を掲げる中国において、中国企業にとってもこの問題は重要である。更なる改善を要望したい。
④ 国際標準に準拠した標準・認証の整備
中国の独自性を強めた標準の採用は、外資企業にとって非関税障壁となるだけでなく、今後中国企業がグローバルに展開していく上でも障害となる。原則として国際標準に準拠した標準を採用していただきたい。そのためにも国際協定に積極的に加盟していくことを要望したい。
2008年の世界金融危機は、世界経済の中で占める中国の位置づけを大きく変えた。「工場としての中国」から「市場としての中国」により関心が高まり、中国経済の持続的発展は世界経済にとって不可欠のものと認識されるようになった。日本企業の投資も、中国で作って中国で売る、あるいは中国でサービスを提供する投資に次第にシフトして来るだろう。
日本企業は中国経済の発展における重要なパートナーとなることを望んでいる。この白書を通じた対話の深化が、日中経済の持続的成長に大きな役割を担うものと信じている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月21日