中日間の釣魚島の主権争い、南中国海問題における中国と周辺国の領土争いなど、これらの問題が近ごろ国内外メディアに大きく取りあげられている。『環球時報』傘下の環球民情調査センターはこのほど、中国7都市で領土問題に対する関心、これらの問題の解決方法についての世論調査を行った。調査によると、9割が中国と日本、その他の国の領土問題に関心を寄せており、6割弱が中国は二国間交渉で争いを解決すべきだと回答、8割弱が米国が中国とその他の国の領土争いで仲裁に入ることに反対している。専門家は、調査から民衆の領土問題に対する関心が非常に高く、理性的に受け止めていることがわかると話す。
環球民情調査センターは11月5日から7日まで、北京、上海、広州、成都、長沙、瀋陽、西安の7都市の18歳以上の一般市民を対象に中国と日本、周辺国の領土問題についてアンケート調査を行った。11月7日12時までに、1305件の回答が集まった。
中国の今後10-20年の最も重要な国家目標について、65.3%が「経済発展の加速、現代化強国の建設」、51.8%が「民生の進歩の促進、社会の公平の実現」、29.6%が「両岸統一の加速、台湾の祖国回帰の実現」と回答。「領土争いへの対処、海上領土の保護」と回答した人は20.2%、「わからない」は2.5%だった。
調査によると、94.9%が中国と日本、その他の国の領土問題に関心を寄せている。「関心がある」は59.0%、「まあまあ関心がある」は29.0%、「少し関心がある」は6.9%となり、「関心がない」「わからない」はそれぞれ4%と1.1%にとどまった。また、男性の関心は女性より高い。男性で「関心がある」と答えた人は68.1%で、女性の49.6%を19ポイント上回った。「まあまあ関心がある」「少し関心がある」と答えた女性は43.7%で、男性の28.3%を15ポイント上回った。「関心がない」と答えた人は男性はわずか3.1%、女性は4.9%だった。
領土争いで中国が採るべき対策について、「中国が主張する海上境界線を堅持し、境界線を確実なものにするよう努めるべき」と答えた人は39.8%、「中国の主権を堅持し、争いを棚上げし、共同開発すべき」は35.3%、「交渉を行い、海上境界線を引き直すべき」は18.%だった。
周辺国との領土争いで中国が採るべき方法については、59.3%が「二国間交渉で解決する」、36.5%が「必要時に武力で解決する」、4.2%が「わからない」と回答。
領土争いの解決で中国が最も避けるべき問題について、「中国の島が隣国に侵されること」と答えた人は52.9%、「隣国が米国の仲裁のもとで反中同盟を結ぶこと」は40.0%、「武力衝突の発生」は32.7%、「領土問題が中国の対外開放を妨害すること」は27.9%だった。
領土問題で、中国はどの国に最も警戒すべきか。調査では、米国と日本を選んだ人がもっとも多く、それぞれ47.4%と40.5%に達した。ベトナムを選んだ人は3.6%、マレーシアは0.5%、インドネシアは0.4%、フィリピンは0.3%、ブルネイは0.1%。
「中国とその他の国の領土争いで米国が仲裁に入ることに賛成か」という質問に対し、76.3%が反対と答えた。賛成は19.0%、「わからない」は4.7%。
この世論調査は、中国の民衆のどのような心理を映し出しているだろうか。中国外交学院戦略・衝突管理研究センターの蘇浩主任は次のように語る。領土問題が近ごろ際立つようになり、ネット上で熱く議論され、強硬な発言も目立つ。しかし調査結果を見ると、国民は領土問題において世間が言うほど感情的になっておらず、非常に理性的である。たとえば、国の経済発展を促進すべきという考えは、武力で領土を守るべきという考えを上回っている。また、交渉で解決すべきという考えは、武力で解決すべきという考えを上回る。専門家は2点を意外に感じている。まずは、南中国海問題において国民のベトナムに対する関心が高くなく、認識と問題の実情に差があることだ。もう一つは、米国が領土争いの仲裁に入ることに賛成する人が19%いることだ。これは、この問題で米国が「ひいき」することを認識していない人もいることを意味する。
中国人民大学国際関係学院の金燦栄教授は、民衆は激しい手段で急いで問題を解決しようとしておらず、長期的な発展を通して国力を強め、民衆の生活レベルを高めることが最も重要だと見ていることが調査からわかると話す。そのほか、一部の質問の回答の比率を見ると、中国社会の観点や利益は多様化し、これが外交の戦略決定を難しくしていることがわかる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年11月8日