2011年元旦明け早々、日本の外務省と国土交通省の高官は忙しくなった。日本の共同通信は、前原誠司外相と国土交通省観光庁の溝畑宏長官が3日、11年度に3回目の中国人向け個人観光ビザ(査証)発給要件を緩和し、有効期限内なら何回も使えるマルチビザを発給する方向で話し合ったと伝えた。この日本の行動について探ってみる。
その一:中国人旅行者向けのマルチビザ発給は、前原外相の外交戦略とみることができる。前原外相は日本の政界で強硬な「タカ派」の人物として知られる。その彼が新年早々このような「友好」的な態度をとった理由、その目的はどこにあるのか?実際に、国土交通大臣を務めた経験のある前原外相は「観光立国」のスローガンを掲げ、それを国策にまで高めようとし、2010年の訪日外国人旅行者数を500万人から1000万人に倍増する目標も立てた。目標達成に向け、彼は中国・杭州で開催された「中日韓観光閣僚サミット」にまで出席。その後、観光庁長官の努力が足りないとみた前原氏はこの長官を更迭した。その一方で、前原氏は外相になってから「タカ派」の考えと行動が目立つようになり、外交上行きづまり身動きが取れなくなった。そんな時に再び目をつけたのが、中国人旅行者のビザの問題だ。これによって外交上の難局打開を試みる一方、今春の訪中を希望している菅直人首相のお膳立てもできるわけだ。
その二:中国人旅行者向けのマルチビザ発給によって外資の日本進出が盛んになる。2009年、日本政府は経済回復がなかなか進まない中、中国人向け観光ビザの発給要件を緩和した。そして裕福になった中国人を通じて日本の社会が、中国の高度経済成長のパワーを肌で感じるのにそう時間はかからなかった。中国人旅行者の猛烈な購買力にまず大手家電量販店や免税店が呆然となり、その勢いは日本の不動産市場にまで及んだ。ところが現在の1回切りの観光ビザではビジネス業界や不動産業界が長期的に中国人旅行者の資金を吸収していくには明らかに限界がある。長期的な角度からみると、中国人旅行者の将来的な日本への視察や投資にも影響が出るだろう。このことからマルチビザの発給は、日本政府が外貨収入を増加するための前提条件となる。
その三:中国人旅行者向けのマルチビザ発給は、日本の地方観光産業の成長を後押しする。1回切りの観光ビザだと時間的制限からほとんどの中国人旅行者は団体旅行を選ぶことになる。中国から出発する旅行団体は多くが旅行社が企画した観光コースをたどり、そのコースもいくつかのお決まりコースに限られている。観光資源をもつ日本の地方自治体の多くがすでに中国人旅行者専用のマーケティングプランを立てているが、旅行コースに組み込まれていないためなかなか実施できずにいる。日本政府がマルチビザ発給を検討し始めたことに、「観光立国」の波に乗りたい地方自治体からは賞賛の声が上がっている。残すはすべての準備を整え、スタートラインに立ち、政策の開始を待つばかりだ。
中国人旅行者向けのマルチビザ発給は、日本と中国のいずれにとっても両国の距離を近づけるいいニュースだが、どんなにいい事尽くしでも、まずはやはり両国の国民感情が土台となる。2011年のしょっぱなから日本政府の担当部門が第3回目の中国人向け個人観光ビザ発給要件緩和を検討している背景には、あるデータから、日本が2010年の訪日外国人旅行者数1000万人の目標を達成できないことがすでに予測されているためだ。単に「目標達成」のため、中国の経済成長の恩恵を授かるためだけなら、日本政府のこうした態度は一次の便宜的なものとなってしまう。中国に友好的ではない国が、たとえ扉を大きく開いたとしても、中国人が行きたいと思うはずがない。中国に対する認識と態度を変えることこそ、前原外相ら政府官僚がまずすべきことではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年1月7日