▽「萌え」は日常生活のスパイス
「萌え文化」は、日本人の日常生活で一種のスパイス的役割を果たしていると主張する人がいる。ある意味では、人々に押し寄せる「ストレスを軽減」し、味気なく苦しい出来事も「萌え」で一笑に付すことが可能となる。政治家の亀井静香氏が出版した著書の帯には「亀井代表萌え潤オ」の文字、自衛隊隊員を募集するポスターにも「今どきの萌える就職先」との宣伝文句が使われた。日本文化に「萌え」が浸透しているすう勢がここから見て取れる。
過去の日本の大型選挙では、政治に無関心な選挙民の関心を引くため、一部のエンタテイメント系雑誌は、人気立候補者の「エピソード」を並べ立て、誰のエピソードが最も面白いか、誰の容貌やキャラクターが最も「萌え」か、などについて評した。小泉純一郎、麻生太郎、鳩山由紀夫ら歴代元首相や国民新党の亀井静香代表はいずれも、「萌え」の称号が与えられている。東日本大震災後、日本のあるゲーム企業が萌えキャラを発表した。可愛い女の子が頭の上に炭を載せ、首都圏の人々に節電を呼び掛けるというものだ。この「萌えキャラ」は、震災後の重苦しい雰囲気を和らげ、その苦痛をしばし忘れさせてくれると人々に好評だった。
日本には、「萌え法律研究所」や「萌え経済研究所」など多くの関連機関がある。これらの機関は、漫画や演劇などの動的な方法によって、人々に関連知識を普及し、複雑で学びづらい専門概念を理解しやすく伝えている。日本の商業界で、人々の「萌えポイント」を探ることは、基本原則となっている。建築家の森川嘉一郎氏は、著書「趣都の誕生 萌える都市アキハバラ」において、今後、東京など各都市は、景観論、計画論、共同体論などから論じることが不可能となり、都市住民が興奮すること、つまり「萌え」の原則に照らし合わせて都市プランの構築を進めていかなければならないと指摘した。