渡辺英子
元「公安」、現在は実業家としてホテル経営などの顔を持つ海岩(ハイ・イエン)の代表作「玉観音」が2年を経て、満を持して今年10月実業之日本社から日本語で翻訳出版された。中国では2回ドラマ化、香港でも映画化されている、中国で知らない人はいないほどの大ヒット作だ。
中国と日本の文化交流というとすぐにアニメ・漫画などが思い浮かぶ。また、細く長く続いてきた中国映画祭が地方へと拡大していたり、この「玉観音」のような政治、思想的な色彩なしでエンターテイメントとして思いっきり楽しめる小説の登場といい、日中の文化交流は友好一色から少しずつ次の段階に入ってきている。本当におもしろいもの、楽しいもの、美しいもの、心の琴線に触れるものは、水が高いところから低いところに流れていくように、静かに、だが確実に広がっていくものだ。文化はそういう力を持っている。「同じものを見て笑える人と結婚したい」という女性は多い。文化には、そんな人を結びつける力がある。
これまで日中の翻訳出版は非常に偏った状況にあった。2009年の版権取引の実績は、日本から中国へは100タイトル(7位)。中国から日本へは1300タイトル(4位)という有様だ。(北京ブックフェア・中日出版交流会において中国出版集団公司発表データ)数の少なさに愕然とする。
来年は日中国交正常化40周年の年。深い歴史を持つ文化大国であり、経済成長著しい中国では多様な文化が花開いている。一方、欧米が認めるアジアの文化発信地、クールジャパンの日本。文化交流の新しい段階が大きなうねりを起こし、どのような化学変化を起こすか期待したい。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年11月15日