舞妓の唇。固く結んだ唇が芸妓生活の秘密を象徴している。
日本人は美、とりわけ「もののあはれ」を好む。日本列島はきれいな自然に囲まれている。しかし、資源の少なさや天災の多さは、日本人の心に「かなしみ」を尊ぶ気質を形成した。「もののあはれ」は「悲哀」、「悲惨」、「悲しみ」という解釈のほかに、「哀れみ」、「同情」、「感動」「美」などの意味も内包している。一種の美的理念である「もののあはれ」は、知性や理性では判断できず、心と直観でのみ感じることができる。
「もののあはれ」を象徴する代表的なものといえば、日本の桜である。桜はきれいだが、すぐに散ってしまう。一般的に、桜の花は咲いてからわずか3~5日で散ってしまう。人々は満開の桜を愛で、咲開く青春を楽しむが、それと同時に散りゆく瞬間にも心惹かれている。風とともに地に落ちる花びらに、生命、そして青春の儚さを感じる。