「もののあはれ」の誕生は、日本の地理と大きく関係している。日本列島は古来より常に霧や靄に覆われていた。人々がみる光は朦朧とし、変幻極まりないイメージだった。世界に日本ほど美しい自然が密集している国はない。雪山、海岸、渓流、渓谷、温泉、滝など。また、日本ほど昔から自然災害が頻発している国も存在しない。火山や地震、雪崩、津波、台風、戦乱など…、日本人が長年見てきたものは、美が瞬く間にはかなく消えゆく様子だった。それらすべての経験が、日本人に「事物は移ろう」という観念を植え付けたのだろう。仏教伝来後、日本人のその観念はさらに強まった。
三日月を好み、つぼみと散る花びらを愛でるのは日本人の国民性の表れである。この無常がもつ悲しみと美が日本人の「もののあはれ」の真髄である。
「もののあはれ」は一種の死生観である。「瞬間の美」を追求し、「永遠の静けさ」を惜しまない。生命の一瞬の輝きを追い求めることが「もののあはれ」の特質である。もしかすれば、この「もののあはれ」が生活に浸透しているからこそ、大地震の悲しみからすぐに立ち直り、復興に向けて新たな生活の一歩を踏み出せたのではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年11月21日