◇台頭する日本の新素材部品
日立化成工業株式会社CSR統括部の加藤淳コーポレートコミュニケーションセンタ長を取材した時のことだ。私がiPadを使って取材内容を記録していると、加藤氏は「iPadのタッチパネルの裏側に使われているフィルムは弊社が製造したものです。各種タブレットやスマートフォンのタッチパネルに使われている特殊なフィルムはたいてい弊社が製造しています」と述べた。また、セラミックス部品やコンデンサなど、日立グループが供給している部品はまだまだあるという。
アップル社公開データによると、日本からは180社以上のメーカーの部品供給を受けているという。その数にも圧倒されるが、なんといっても、基幹部品のほとんどが日本メーカーから調達していることに注目したい。
原材料、部品の製造が今、大きな転換期に来ている。古くから用いられている鉄鋼、銅、アルミなどの金属は、すでにその性能のすべてを研究し尽くされている。だが、新金属、希少金属の性能については研究が始まったばかりで、市場前途は非常に明るい。磁性材料などの新素材の開発は、電気自動車に使われるモーターの小型化、出力数の増大を可能にさせている。
冶金などの物理的操作による材料抽出の関連技術はすでに出揃っている。次に注目されるのは、化学的操作により新素材を得る方法である。「化学的手法は温度条件が厳しく、複雑な工程を経なければなりません。どんな企業でも真似できる技術ではないのです」と加藤氏は指摘する。日本のこうした技術の累積は、長期的な収益を企業にもたらすはずである。
日韓貿易データからもこうした特徴が垣間見られる。1995年、日本は140億ドルの貿易黒字だが、2008年には倍の297億ドルに膨らんでいる。その主な理由として、韓国は輸出用の電気製品を製造するために、日本から大量の部品を輸入しなければならないことにある。サムソン、LGのテレビが世界で売れれば売れるほど、日本から輸入する部品も多くなっているのだ。
テレビ事業の衰退から、新素材部品の台頭へと、日本メーカーは今ちょうど転換期を迎えている。近い将来では、省エネ技術を強みに日本が先陣を切って世界の市場を切り開くだろうし、遠い将来的には、新素材という他の国が真似できない部材・部品産業が日本のこれからの経済を支えていくだろう。こうした転換は今後ますます顕著になるはずである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年7月11日