文=奥井禮喜
公明党山口那津男代表と中国習近平総書記との会談が実現したのは非常によかった。問題解決のために一歩前進したのだから、間伸びさせず、次の手を打ってもらいたい。
その際、(私は日本人だから)日本側が心がけるべきことは何かを考える。相手側に注文をつけ、相手の出方待ちというような態度をとるのであれば姑息であるし、せっかくの機会を棒に振ってしまう。
山口代表に対しても――山口氏は出発前、「将来の世代に解決を委ねることが、当面の不測の事態を避ける方法だ」と発言。中国側の主張に沿った、領有権の「棚上げ」論ではないかとの疑念を招いた。――(朝日社説1/26)というような愚図ついた不協和音が出た。
丹羽宇一郎前中国大使が、政府当局に慎重な行動を提言したにもかかわらず、それを真剣真摯に検討するどころか、政府の指示と違うとして切って捨てた。外交はもっと理性的に取り組むべきものである。
領土問題が存在せず、というのはわが国内部では当然通りがよいが、現実に問題が存在したから国交回復時に「棚上げ」して、今日に至ったのである。少なくとも石原発言以前へ戻さなければ、相手の信頼は得られない。
いかに政府当局が、石原発言とその後の行動を懸念し、事態を拡大せぬために国有化したのだと抗弁しても、相手からすれば問題の棚上げが崩れたと判断するのは必然である。
その後発生した事態の火付けを日本側がやったのである。相手が挑発を続けていると批判するけれども、もし石原発言なく、国有化がなければ、そのようなこじれた事態は発生していなかったはずである。