伝統的な神道理念と背馳
最後に、首相の参拝は「文化的伝統」「信仰の自由」「国民の意志」という言い訳も、全く成り立たない。靖国神社が侵略戦争中に戦死した兵士に対する一方的な祭祀は、日本の伝統的な神道理念と祭祀の習俗に背馳している。1980年代中ごろ、すでに日本宗教文化研究の権威・中村元、梅原猛両氏は「閣僚の靖国神社参拝に関する懇談会」に参加した際、明確に反対の態度を表明している。今世紀に入って、小泉純一郎元首相が何度も参拝していた時期に、梅原氏は2004年、雑誌『世界』9月号に掲載されたインタビュー「靖国参拝は日本の伝統から逸脱している」で、宗教学と民俗学の立場から首相の靖国参拝の不合理性について解説している。さらに、1979年靖国神社にA級戦犯が合祀された後、天皇自身が二度と靖国に参拝に行かなくなったのも首相の参拝の不合理性を説明している。明らかに、日本の政治家が天皇と多くの国民の意向に逆らって、「民族文化の尊重」と解説することはできず、むしろ故意に政治的なショーをして見せ、対外的には隣国を刺激し、対内的には人心を籠絡し、大和民族主義の優越感を示すだけだと言えるだろう。