靖国参拝問題は、釣魚島問題とやや異なっている。この問題は安倍首相個人の間違った歴史観・戦争観によるところが大きいが、右翼勢力の背後からの推進もある。これには、右翼勢力の利益の問題が関わっている。
釣魚島問題で、日本の国民と各界が長く耳にしてきたのは、日本政府と右翼の偏った発言のみであるため、このそれらしい説を正確に理解しておらず、これらの問題で右翼に左右され、選挙で中国に強硬な姿勢を示すタカ派・右翼勢力を選出する可能性がある。これらの勢力は当選後、靖国神社を参拝するだろう。靖国神社を参拝せず、中国に対して友好的な人物は、右傾化の中で当選を逃す。そうなれば、安倍内閣の誕生後、靖国神社を参拝する国会議員が、これまでより倍増することになるだろう。日本人が真相を理解しなければ、2016年7月の衆参ダブル選挙で釣魚島問題が誇張されるようになる。この悪循環が調整されなければ、今後の先行きは非常に懸念される。
日本の右翼勢力は首相の靖国参拝を促しているが、さらに軍事面から日本の「ソフトパワー」を強化しようとしている。たとえば戦前の靖国神社は皇軍の「霊安室」、日本の対外軍事拡張の精神的支柱であった。軍国主義は戦後唾棄されたが、一部の右翼勢力は靖国神社を参拝しなければ、誰が日本のために戦ってくれるのかと公然と発言している。そこで右翼は、戦争の亡き魂を日本の英霊として靖国神社に祀ろうとしている。これは歴史問題を複雑化させるだけでなく、現在・未来の日本の発展が平和の道を歩み続けるかという、重大な戦略的問題に関連している。
安倍首相の最近の発言、新たな防衛計画の大綱の発表、間もなく実施される集団的自衛権の解禁を見ると、日本は法制度面からの突破を試みており、自国を海外で戦える、対外的に軍事力を使用できる国にしようとしていることが分かる。日本はまた釣魚島問題で、中国に対して海と空の優勢を保ち、同盟国とともに攻勢をかける軍事構造を形成しようとしている。
そこで安倍首相は、戦後に武器輸出を禁じた「三原則」を解禁し、日本にとって有利と判断する国に武器を輸出できるようにし、制限的な規定の中で中国を武器を譲渡できない第三国とした。安倍首相はあらゆる手を尽くし、軍事安全面で中国に対して戦略的な圧力を形成しようとしている。
中日の間には、釣魚島問題、日本の指導者による靖国参拝および歴史観の問題、安倍首相の対中政策および東アジアの平和に関連する軍事動向の問題という、3つの障害が存在している。これらは安倍内閣の対中戦略に関する問題であり、簡単に解決できるものではなく、壁に突き当たるまで続けられる可能性がある。これに対しては十分な心の準備が必要だ。
しかしこれと同時に、日本国内の平和を愛する人々・団体・政党が、さまざまな活動を通じて安倍内閣の危険な傾向を批判している。例えば日本共産党の代表者は今年5月上旬、機関紙「しんぶん赤旗」に関連記事を掲載し、安倍内閣が憲法解釈の柔軟な見直しにより集団的自衛権を解禁しようとしていることを厳しく批判した。日本国内の世論調査では6割以上の国民が集団的自衛権の解禁に反対を表明した。多くの日本人は日本国憲法第9条の改正に同意していない。日本の未来の動向がどうなるかは、国内のさまざまな政治勢力の駆け引きや、日本政治の右傾化が阻止されるか拡大を続けるかにかかっている。これは直接、中日関係に影響を及ぼすだろう。(筆者:劉江永 清華大学現代国際関係研究院副院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年5月20日