文=清華大学・野村総合研究所中国研究センター常務副主任松野豊
日中往来の歴史はとてつもなく長い。そして過去に日中両国がその時々の世界情勢の中で、どのように協調しあるいは反目してきたかについての研究も山のようにある。 現代における日中関係を語る時に常に指摘されることがある。それは過去の日中関係はその時々で国力に大きな差があることが多かったため、両国に争い事があっても問題解決の道はある程度見えていた。現代はどの国も高度な軍事技術を保有しているので、戦争のような行為は双方にも周囲にも大きな悲劇をもたらすのであり得ない。だから対峙する国同士は、戦争以外の手段で何らかの落とし所を見つけて妥協するしか解決の道はない。
現在の日中関係は相互不信の状態にある。世論調査でも、必ず双方が相手をどう思っているのかといった点に注目が集まる。つまり現在の日中関係は、「お互いに相手の存在や主張を認めない」というところが最大の障害なのである。中国の研究者の中には、日本の反中感情は、急速に現代化・大国化した中国の存在を日本人が心理的に受け入れられないところに原因があると言う人がいるが、それは間違いだ。日本人は、国土も人口も日本の10倍以上ある中国が経済規模や軍事力で日本を超えるというのは、ある意味当たり前だと思っている。
一方中国人から見れば、大国になった中国の政治・社会体制を何かにつけて批判し、かつこれ以上の発展や大国化はもう認めないかのような外交政策を取る日本は、中国人のプライドを逆なでする存在でありとても不愉快に感じている。このように日中はお互いに、相手が変わらない限り関係が良くなることがないと思っているところに最大の問題がある。
では、日中両国がお互いの存在を認め合えるといういわば“妥協点”は、どのあたりにあるのだろうか?こんなSF小説がある。「地球上で日中、米中、米露などはいつも仲が悪く、お互いに悪口を言い合っていた。しかしある時、遠い宇宙の星の軍隊が突然地球に向かって攻撃をしかけてきた。地球滅亡の一大危機である。するとそれまでいがみ合っていた米露も米中もそして日中までもがお互いに協力を始め、宇宙の敵に立ち向かう体制を作り始めた・・・」。
このSF小説が示唆しているのはこういうことだ。共通の目的があれば、仲が悪かった相手とも自然に手を組むようになれる。 つまり日中が不毛な争いから脱却するためには、「共通の大きな目標」を持てばよいということになる。我々はこれからの未来十年のスパンで果たして関係修復のための大きな共通目標を見いだすことができるだろうか。筆者はここで3つほど提案をしてみる、そして読者の感想を聞きたい。