トランプ氏の交渉術は中米関係に大ダメージを与える可能性がある
王暁輝・チャイナネット総編集長インタビュー
聞き手・野中大樹
トランプ大統領が「為替操作国」などとやり玉にあげるのが中国だ。政権中枢には対中強硬派も複数入った。この事態を中国はどう見ているのか。中国のインターネットニュースセンター『チャイナネット』総編集長の王暁輝さんに見解を聞いた。
――ドナルド・トランプ氏は中国を盛んに「為替操作国」だとし、米国の雇用を奪っていると批判しています。
最近、人民元の対ドルレートは確かに下落していますが、人民元の下落はドル高の結果であり中国が為替レートを操作しているというのは客観的ではありません。
一つの産業が、ある国から別の国へと拠点を移す場合、それは多くの利点の比較によって決定されるものであり、為替レートだけで決まるものではありません。
アメリカのトランプ大統領は選挙中、「アメリカを再び偉大にする」とのスローガンを打ち出し、アメリカのGDP成長率を4%に達すと承諾した。中国との貿易赤字を逆転するために、トランプ氏は中国からの輸出商品に高い関税を徴収するほか、中国を「為替操縦国」リストにランクインしようとしている。
もし中国が為替レートを操作していると言うのなら、ドルはドルの操作をしていないのでしょうか。グローバル化を背景に、産業の流動性は水と同じで、コストがより低い場所に流れてゆきます。これは一種の法則であり、米国人の仕事が中国に奪われたとは言えません。
連邦準備制度理事会のバーナンキ元議長はかつて、中国は為替レート操作国であるとトランプが言うのは現実に即していないと言ったことがあります。彼はまた、中国と米国にひとたび貿易摩擦が発生すれば、とても危険だと警告しました。
米国は第2次世界大戦以後、一貫して世界最強国であり続けてきたため、他者の問題について指摘することに慣れすぎており、自らの原因を探ることがほとんどありません。自国の経済に問題が生じたのに自分にはまったく落ち度がなく、すべてを他国のせいにするのでしょうか。 トランプ氏が成熟した政治家であるのなら、いかにして中国のような大国と協力していけるかを、もっと真剣に考えるでしょう。
トランプ氏は海外に移転した工場を米国に戻すと言っていますが、これは大統領が決定できることではなく経済法則が決めることです。さらに言えば、現在の大企業はみな国際資本であり、米国の企業といえども実際には日本の株あるいはドイツの株が多く占めているかもしれず、彼らは必ずや移転コストを比較するに違いありません。
また、産業の米国への回帰は、米国からすると本当によい事なのでしょうか。米国はずっと世界のイノベーションのエンジンであり、グローバル化に逆行するやり方は米国を再び強大にするとは限らず、世界経済を不振に陥れる可能性すらあります。