日本の大手企業各社は15日、新年度の賃金のベースアップ額を発表した。その多くが4年ぶりの低水準だった。安倍首相が提唱する「消費を刺激して経済を活性化する」という見通しは微妙になってきた。4月の新年度を前に、日本企業は労使共に賃金のベースアップ交渉を行う。いわゆる「春闘」である。長期的な不況により、21世紀になってからベースアップは滞ってきた。
安倍首相が首相に就任した2012年から「アベノミクス」が始まった。これは、疲れを見せる日本経済を苦境から脱出させようとする取り組みである。安倍首相は毎年、各企業に向けて従業員の賃金値上げを求めてきた。それを通じて消費を刺激し、すると企業は増益となり、さらに賃金が上がるという良性スパイラルを目指したのだ。そのため「春闘」は「官制春闘」と呼ばれるようになった。春闘の結果は、企業の景気見通しのバロメーターであり、消費の動向を占うものでもある。円安などの要因により日本の大企業は大きな利益を上げている。内部留保金も潤沢になっている。しかし経済見通しや為替変動に不安があることから、大幅なベースアップには及び腰だった。
トランプ氏がアメリカ大統領に就任して以降、同氏の経済や貿易に対する論調は、日本企業の業績の先行きを懸念させるものとなっている。日本の大企業の春闘の結果は、中小企業の労使交渉でも参照基準となる。特に自動車や電機メーカーがそうだ。安倍首相は賃金のベースアップについて、今年は「少なくとも昨年並みにすべき」と連呼してきた。日本自動車工業会が今年要求した月額ベースアップは昨年同様に3000円だった。しかしほとんどの企業がこれを呑まなかった。 3月7日、トヨタ自動車東京本社。トヨタの組合が「春闘」の集会を行った。