麗澤大学特任教授 三潴 正道
「ちょっと話が文学づいちゃったけど、前に水滸伝の話をしたよね」
「ええ、宋江が出てくる話よね」
「そう、108人の英雄豪傑が出てくる小説」
「水滸伝も日本と関係があるの?」
「水滸伝に出てくる108人の英雄豪傑は何の縁で結ばれているか知ってるかい?」
「前に漫画で一回読んだことがあるんだけど、なんだったかしら?」
「第一巻に書いてあるよ」
「アッ思い出した!お墓の中から出てきたんでしたっけ」
「お墓じゃないよ。道教のお寺、道観の石碑の下に閉じ込められていた魔王たち」
「それを逃がしちゃったのよね」
「うん、その魔性を受けた、生まれたのが水滸伝の英雄たちさ」
「で、それと日本との関係って…」
「『里見八犬伝』って知ってるかい?」
「滝沢馬琴の?」
「さすが!」
「高校で日本史選択だって言わなかった?」
「そうだったね。あそこに八犬士って登場するよね」
「中国人のあなたがどうしてそんなこと知ってるの?」
「おいおい、僕、大学も大学院も日本語専攻だよ」
「お見それしました。その八犬士がどうしたの?」
「彼らの縁って何だった?」
「知ってるわよ。えーと、伏姫が持っていた数珠に書いてあった…、なんだっけ」
「仁義礼智信孝悌忠」
「すごい!」
「すごくはないよ。儒家が一番大切にしている、人として守るべきモラルだ」
「中国人には常識なのね」
「人を罵るとき、よく“忘八蛋”ていうよ」
「罵り言葉?」
「そう、人間として大事な8つのモラルを忘れた大馬鹿野郎って意味だよ」
「キツッ!」
「八犬士は伏姫の持っていた数珠を一人ずつ握りしめて生まれたんだ」
「その縁で結ばれてお家再興を果たすってわけね」
「そう、滝沢馬琴は水滸伝を見て、このモチーフを思いついたんだろうって言われている」
「かもね。日本の文学ってやっぱり中国の影響がすごくあるんだわ」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年5月10日