安倍首相は「一帯一路」イニシアティブとAIIBに対してまだはっきりとした立場を示してはいないが、その態度はすでに根本的に変化している。その原因を考えれば、時勢の変化ということが挙げられる。ポスト危機時代のグローバル経済は、グローバル化体系の支えをより必要としている。とりわけ新興市場は、広大な資金と生産能力関連のプロジェクトによって、危機によって低迷した経済を回復させる必要に迫られている。中国と日本はいずれも、分厚い資本と生産能力の土台を持っており、もともと連携して協力とウィンウィンを実現する可能性を持っている。だが日本は米国の「アジア太平洋へのリバランス」戦略に追随し、中国を押さえ込む政策を取った。そのため中国が主導してAIIBを設立した時には、日本は米国に追随し、AIIBの積極的な反対者となった。こうした情勢の下、日本は、AIIBの創立メンバーとなる機会を失った。欧州の国々は一方、中国とともに、AIIBをグローバルな金融ガバナンス機構として成長させて来た。
2016年、AIIBは17億ドルの融資を行い、融資の效率と效果は世界銀行とアジア開発銀行を超えた。AIIBの発展の勢いから見れば、AIIBは現在、アジア開発銀行を超え、世界銀行に迫ろうとしている。先進国の集まりであるG7では、加盟していないのは米国と日本だけだ。だが日本は、もしも米国が日本よりも先にAIIBに加盟すれば、日本は受け身にならざるを得なくなると心配している。
中国の主導するAIIBと「一帯一路」イニシアティブの出発点は、世界がつながり、協力とウィンウィンを実現することだ。だが日本の出発点は中国に反対することだった。日本はかつて、1千億ドルに達するインフラ建設基金を打ち出し、東南アジアの鉄道市場でいくつかの成果を得たが、地域と世界における影響力を高めることはできなかった。
日本がオバマ時代、全力を上げて中国に対抗している間に、中国の主導するAIIBと「一帯一路」イニシアティブはすでに花を咲かせ、実を結んでいた。トランプ時代になり、反グローバル化の動きが押し寄せてようやく、世界は、中国がリードする新型のグローバル化を認め始めた。トランプ大統領が「パリ協定」離脱を表明したことで、米国はすでに、世界の公の敵となっている。日本は、米国とグローバル化の間での選択を迫られている。外向きの経済によって主導された日本は、米国のような反グローバル化の立場を取ることはできない。そのような立場は日本の利益に合わない。