さよなら「大日本主義」
21世紀は今まで唯一の大国とも言えた米国が徐々に衰退する一方で中国が台頭していることから、今後は中国と米国が拮抗しつつ協力して発展する時代にしなければいけないと思います。日本の「実るほど{こうべ}頭を垂れる稲穂かな」というたとえのように、人間も国も成長すればするほど、周辺に対して力で優越を示そうという発想に陥りやすくなりますが、習近平主席の大国主義は実れば実るほど頭を垂れるもので、周辺諸国との協力関係を高めつつ、13億人以上の国民を有する中国としての生き方を訴えていくという発想は良い方向だと思います。そしてその先に「一帯一路」構想があると理解しています。
日本はかつて経済中心に発展し、GDPが世界第2位にまで伸びた国ですが、人口はわずか1億2000数百万で、中国の10分の1以下です。このように小さな国が中国と米国という二つの大国に挟まれ、自分も大国だと虚勢を張ることに、果たしてどれだけ意味があるでしょうか。私は政治や経済で強い国を目指すよりも、一人ひとりが幸せを感じる国であってもらいたいと思います。ですから日本は大国主義を求めるのではなく、ミドルパワーとして世界の国々にモデルを示すことが大事だと思っています。
幸か不幸か、日本は世界初の高齢社会国家になりました。恐らく今後の中国も高齢社会に突入し、お年寄りの生きかたと労働力の新しい発想が求められるでしょう。このような時にこそ日本がミドルパワーを発揮し、初の高齢社会の国として成功例を作り上げ、お年寄りや生まれてくる子供たちに満たされた社会を提供するようであってほしいと思います。そのためには経済成長や軍事大国を目標とするのではなく、一人ひとりの人間の生きる価値をいかに見出し、国がそれをいかに助長していくかが求められていると思います。周辺国とケンカをするのではなく、より仲良くしていくことこそが、共生の社会です。もともと中国や韓国から多くのものを学び、文化的価値を享受している日本は、より中国と共に生きる、あるいは生かされる喜びを味わえるような関係になるべきで、紛争を未然に防ぐシステムを作っていくことが大事だと考えます。