小松製作所の元会長・坂根正弘氏が話すように、「今、品質の問題が理事会で話し合われることはほとんどなく、末端の品質責任者が処理するようになっている」。
次に、日本の企業から、終身雇用制が消えかけ、企業の質を重んじる基礎的原動力が崩壊している。
経済協力開発機構(OECD)は以前、日本の終身雇用制、年功序列制を「経営神器」と絶賛したが、それは既に過去の栄光となっている。多くの派遣社員からなる非正社員の数が現在、従業員全体の40%を占めるようになっており、それが原因で、従業員らが会社で居心地の良さを感じることはできず、企業の技術進歩、商品の質などの軽視につながっている。
正社員であっても、会社の経営・業績が悪化し、経営スタイルの移行を図っているため、首を切られる可能性があり、自分の会社の質の管理を向上させようという熱意が冷めている。加えて、熟練した技術を誇っていた「団塊の世代」が次々に退職し、日本の企業の品質管理のレベル低下が続いている。
最後に、企業経営者の高慢な態度も品質問題続出の主な原因だ。
神戸製鋼を例にすると、1999年に総会屋への利益供与事件が発覚し、06年には加熱炉やボイラーなどから大気汚染防止法の基準値を超える窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)を排出しながら、データを改ざんし、それが発覚したにもかかわらず、歴代管理層はそれらの教訓を生かし、リスク管理を強化することはできず、逆に、不正を隠蔽し、社会的責任や監督義務をあるべき位置に置いてこなかった。
神戸製鋼とほぼ時を同じくして発覚したのが、自動車メーカー・日産の不正問題で、同社の西川広人社長は10月2日に、資格がない従業員に完成車検査をさせていたとして、謝罪会見を行った。各界から非難を浴びたものの、このような傲慢な態度は企業経営にまで深く根を張ってしまっている。「日本経済新聞」は、「日産は不正発覚後も、資格がない従業員に完成車検査をさせていた」と報じている。日本の企業、特に、一部の大企業の「腫瘍」は既に深刻なレベルに達しているのは明らかだ。
崩壊しつつある社会の基礎
企業そのもののほか、不正の背後には深い社会的要因もある。これまで、日本の製造業が改善を続け、繁栄するのを支えてきた社会の基礎が崩れているのだ。