あと一カ月もしないうちに、4回目となる南京大虐殺犠牲者国家追悼日がやってくる。海外では、アジアでの第2次大戦史の全貌を知る人がますます増え、ナチスがユダヤ人虐殺を行っていただけでなく、日本軍国主義もかつて、中国などの多くのアジアの国々で、南京大虐殺や人体細菌実験、慰安婦強制徴用など憎むべき残虐な暴行を行っていたことを知るようになっている。
世界の目を開かせ、アジアにおける第2次大戦の犠牲者が正しく悼まれるようにするため、国内外では多くの有識者らが長年にわたって奔走を続けている。
認識の変化は子どもたちの歴史の授業から始まる
左から一人目は劉美玲さん
カナダの学校のカリキュラムには十数年前、アジアでの第2次大戦にかかわる歴史的資料はほとんど取り入れられていなかった。だがオンタリオ州の公立学校のカリキュラムには今や、11カリキュラムに関連する内容が含まれるようになっている。この変化の目撃者であり、貢献者でもあるのが劉美玲だ。
中国香港に生まれた劉美玲は、カナダに定住してすでに30年余りとなる。現在は、非営利団体・トロントALPHA(第2次大戦アジア史保存連盟、Association for Learning and Preserving the History of World War II in Asia)の代表を務めている。ここ十数年にわたって、カナダの教育機関で第2次大戦のアジア史が教えられるよう働きかけ、中華系米国人の女性作家・故アイリス・チャンによる南京大虐殺の記録についてのドキュメンタリーの撮影の資金調達にも参加した。
劉美玲は2004年から、カナダの歴史や政治の教師など教育界の人びとを連れて中国を訪れ、第2次大戦のアジア史の学習旅行を行っている。
「学校でこの間の歴史が教えられることがなければ、ほかの努力をしてもなかなか報われない」と劉美玲は語る。ALPHAは長年にわたって、関連教材の編集を推進してきた。これを幅広く共有し、カナダなどの西洋諸国やアジアの国々のより多くの教師にこの間の歴史を知ってもらい、教えてもらうことが願いだ。
カナダでは、議員の黄素梅とフロー・マルセリーノがそれぞれオンタリオ州のマニトバ州の州議会で「南京大虐殺記念日」設立の議案を推進したが、いずれも日本の右翼勢力の妨害にあった。
劉美玲は、カナダが立法を通じて南京大虐殺を公に認めることはもちろん望ましいものの、学校教育から着手することがより重要だと考えている。「教育なしに記念日だけできても、それが何を意味するのか誰も知らないというのでは仕方がない」
劉美玲にとって慰めとなっているのは、ますます多くのカナダの若者が、歴史を伝承し、平和を推進する陣営へと自ら加わっているということだ。オンタリオ州のトロント大学やウォータールー大学、ウェスタンオンタリオ大学、キングストン・クイーンズ大学、マックマスター大学にはいずれも、学生が自ら設立したALPHAの分会がある。
劉美玲は、次の世代が歴史から何を学ぶかが、「教育にとってとても重要な課題だ」と考えている。
「若者たちには、人間とは何かを歴史から学び、世界の平和に自分たちがいかなる責任を負っているのかを知ってほしい」と彼女は語る。
中国人の傷であるだけでなく世界が共有すべき記憶