80年前、あまりにも多くの血が流されたあの事件は、南京にとって、中国全体にとって、消えることのない傷となった。
現在、南京大虐殺の生存者は100人に満たない。
この12月10日にも、最年長の南京大虐殺の生存者だった管光鏡さん(男性)がこの世を去った。100歳だった。
管さんは1917年4月に生まれ、1937年、旧日本軍の飛行機による空爆に自ら遭遇した。リツ水東河の川辺の大きな石の下に身を隠し、一命をとりとめた。南京陥落後、管さんは、旧日本軍が南京郊外で現地の無辜の庶民を虐殺するのを何度も目撃した。90歳の時、南京大虐殺遭難同胞記念館を見学に訪れ、犠牲になった同胞を悼んだこともある。
時が過ぎゆく中、あとどれくらいの大虐殺の経験者があの悲惨な歴史を証言し、あとどれくらいの人が人類史上最も暗いあの日を覚えておくために奔走することができるのだろうか。
彼女もそのうちの一人だった。
彼女の名前はアイリス・チャン。中華系米国人だ。
ハーバード大学の歴史専攻の主任を務めたウィリアム・カービー氏は、アイリス・チャンの書いた『ザ・レイプ・オブ・南京』を、人類史上で初めて「南京大虐殺を十分に研究した英語著作」と評している。
この本が出版されるまで、欧米社会は南京大虐殺という災禍についてほとんど知らなかった。アウシュビッツ収容所について知っていても、ナチスによって100万のユダヤ人やポーランド人、ソ連人、ジプシー、ドイツ人が虐殺されたことは知っていても、第2次大戦中に旧日本軍が南京でいかなる暴力行為を犯したかは知らなかった。
アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』にはこんな一節がある。