南京大虐殺と彼女にはどんな関係があったのだろうか。
もともとは少しの関係もなかった。
南京大虐殺を知るまで、彼女は多くの人々と同様、単純で幸福な生活を送っていた。米国のイリノイ大学を卒業し、ジョンズ・ホプキンス大学でライティングの修士学位を獲得した。彼女はほかのどんな道を歩み、人々がうらやむ「アメリカン・ドリーム」を実現することもできたのである。
だがアイリス・チャンはこの間の歴史を研究することを選び、『ザ・レイプ・オブ・南京』を出版し、さらにはこのために若くして命を失うこととなった。
彼女はより多くの人にこの間の歴史を知らせ、より多くの人に旧日本軍が中国で犯した数々の犯罪行為を知らせた。彼女もまた南京大虐殺のために奔走した人の一人であったことは明らかだ。
南京大虐殺は彼女にとって、命のつながりだった。
彼女自身の命のつながりであり、南京大虐殺で亡くなった人々とのつながりであり、平和な時代に暮らす私たちとのつながりだった。
10月26日、カナダのオンタリオ州議会は、議論と投票を経て、毎年12月13日をオンタリオ州の「南京大虐殺記念日」とするという中華系議員の黄素梅による動議を可決した。西側諸国の地方議会が「南京大虐殺記念日」設立の動議を可決したのはこれが初めてだ。
12月9日午後、カナダのトロント地区では、1000人にのぼる華僑・華人が、マーカム市会議センターで追悼会を行い、80年前に南京大虐殺で犠牲となった30万人の同胞を悼んだ。